悪霊狩り
私はいつでも悪いものを消し去る事ができます、それはこの世のありとあらゆる、ただ空間に彷徨う気配のようなものから、迷える魂、またあるいは悪さをする魂です、だけど私はそんな私の才能を退屈に感じています、まだ学生生活を送る身でそのはっきりとした用途と末路を隅々まで憶測する事はできないけれど、私は周囲との関係や周囲の人間の才能や個性をみるにつけ、劣等感を抱かざるをえないのです、私はこれを才能と呼ぶことができません、そういう事の意味をかんじません、私は退屈な学生で、廊下の隅にぽつりと立っている事があります、そのくせ孤独でさびしくもあるのでガラス窓から遠くをみます、声がするとおもったら私の靴がキュキュッと廊下との間の摩擦で音をたてていただけです、今度ははっきり声がきこえました、左をふりむきます、ただステンレス製の手洗い場があるだけでした、右をふりかえります、いました。
「こんにちは」
にっこりと笑う中年男性がいました、何をしにきたのでしょうか、その笑みには邪悪な心がまじっています、彼は私の肩にてをのばし、その笑みを黒いオーラによってゆがませていきなりぐわああーっと襲い掛かってくる動作をしました。
「やめて」
瞬間、私の背後から、もう一人の私の影、私のたましいだけがその男の魂を切り裂き、けしさりました、男はうめき声をあげて昇天しました。私はまた退屈そうに、埃ののこっているがさつな掃除後の残るガラス窓をのぞきその向こうの世界に思いをはせます。
そういう事が何度もあります、私は人に見えない世界では有能です、けれど一体何の役にたつのでしょう、たとえばお祓いを頼まれたこともあったし、その都度ちゃんと役割をこなしたけれど、完全に仕事をこなしてしまうと、でもみんな不服そうに退屈そうにしています、たとえば、え?いままにしたの?もうおわったの?とあっけにとられて、もっと何か面白い事が起こるとおもったとか、こういう人たちは自分の幸福を何だと思っているのでしょうか、この人たちには、普通の人たちには、幸福がわからない、この私の背後の私が見えないからです、だから私はこの能力は私にとっては何の役にも立たないし、これからもそうだと思うのです。
悪霊狩り