日常に懐疑
私は歩いている。歩いていると言われれば、皆は当然大地を踏みしめて私が歩いているところを想像するでしょう。
そうだ、たしかに私は今大地を踏みしめながら歩いている。
私は空を見ている。どこまでも広く蒼穹な空を。
大空を翔る鳥たちはどうして飛べるのだろうか。どうして飛ぼうと思ったのか。
私はかかとを浮かせて空に近づこうとしたけれど、その差は全く縮まらない。鳥の方がよっぽど近いくらいだった。
鳥に出来て私にできないことはないだろう。
目を閉じて、自分が飛ぶ姿を想像する。
私の背からゆっくりと尖ったものが吐出した。ビリビリとその部分の服を裂いて白い羽が生えてきた。よし、これなら飛べるだろう。目を開いて、私はこれから行くであろう、かの蒼穹の空を見つめる。
五、四、三、二、一
私は、
そこに羽などないことなど分かっている。
日常に懐疑