首を締めろ





ねぇ。

嫌な臭いとか、嫌な味とか、嫌な温もりとか感じたことない?

僕は今ね、そんな空気に包まれてるよ。

そうだな。

腹を切った男が、僕に傷口晒して

目を閉じることも許さず

これでもか、これでもかって

吹き出す血を顔に浴びせるやり方じゃなくて



戦場で苦しんでる子供たちをズラーっと並べて

片っ端からもっと酷い目に合わせる。

どうだ! どうだ!

酷いだろ? 酷い世界だろ?

よく見ろ! よく見るんだ!


僕は十字架に縛られて

ささいな抵抗さえ奪われる

理性も倫理も残らず全部


寒くて熱くて悲しくて哀しくて

叫びたくて喚きたくて

だけど、そんな資格もなくて。


身体中から黒い煙が上がるんだ。

とっくに封印した闇。汚物にも似た悪臭。

近寄りたくない恐ろしいものたち。


助けて! 助けて!

声をあげても、声をからしても

助けなんてこない。

諦めることは大人になること

それよりも僕にはするべきことがある

するべきこと? 笑わせる。



何もかもわかったような顔で

『仕方ない』

魔法の呪文みたいに、これさえ言えりゃ

全て曖昧になるんだよ

正しい大人とはなんだ?

進まない理由。前を見ない理由。

自分を守れりゃ、それでいい


おい、首を絞めろ

何もかもわからなくなる前に

毒虫に食い殺される前に


その腐った首を締めろ

首を締めろ

首を締めろ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted