夢と偽の手配犯

「僕はちゃんと手配書を出しましたよ、夢の中にでるあの怪物の手配書を」
「ちゃんとレム睡眠のときにだしたか」
「眼球運動を確認しました」

 僕はときたま夢をみる、僕の夢の中には、僕の脳の映像が流れることがあって、その場合、僕の脳の中には大きな空間がひろがっていて、それはおしゃれなカフェのカウンター席のようなもので、その中に何十人もの妖精がいる。妖精たちはいつもそこで会議をする。それはほぼ僕と同じ姿かたち格好をしている。これは僕だけの見る夢かも知れないが、明晰夢のようでもあり、そうでないようでもある、どういうことか?僕はそのとき妖精の一人ひとりの意識の中に自意識を感じてその上で、自分の夢の中、もう一人の存在、もくもくと紡がれる無意味な物語の客観的な体験者として存在している。同時にいくつもの視点があり、その上でそれを俯瞰でもつ理性的な自分が存在している。
 妖精たちの仕事はひとつ。夢をみるとき、頭の中で交互に繰り返されるレム睡眠とノンレム睡眠、そのうち浅いレム睡眠のときをみはからって人は夢をみる、そのとき、人は記憶を整理し、定着させるらしいのだが、そのときに僕は取捨選択をする。僕はその日の重要な出来事を自分の脳に、自分の夢の中で自発的に選択して記憶させる、簡単にいうと、その日に経験した中で重要な記憶とそうでない記憶を自分の夢の中で選択している。これは勉強の時にはひどく役にたつ、だがこの高度な技術は、ときとしてわるい事に働く事もある。明らかに現実で一度もであったことのない人の顔を、夢の中で認識し、現実の自分の記憶の中に刷り込むようなことさえごくまれに起こることがある、僕はそれを、明晰夢のバグと呼んでいるが。

「どこかでお会いしましたか?」 
 何をおもったか、その夢の苦痛のせいで、僕はときとして初対面の人にこんなことをいう事がある、もちろん相手は自分の事をしらない、だからそのとき、自分はその夢についてひとつ違和感をもつことになる。それは明晰夢なのか、それとも正夢なのか。

夢と偽の手配犯

夢と偽の手配犯

明晰夢×レム睡眠×記憶×脳内会議×etc. ものすごく短いです、本日のおすすめです。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-03

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted