レモンの飴~第3話~


朝の到来というのは早いようで遅い。夢の覚めた時のようにはっきりしている。昨日の今日で拭いきれない様なむず痒さ。あの手紙の内容が頭の中でくるくるし始め、悶々としてくる。それは恋のように淡いものではなく、心を蝕むようにちりちりと灼けるような痛みだ。僕は夕飯の残り物を腹に収めてから机に向かい、続きを読むことにした。

金栄惣之丞と私の関係性については実際問題兄妹と言うことになります。兄はカミサマとして名を馳せるのですが、私は2人もカミサマは必要ないという理由から今の住処である武川家に行き着いたわけです。どうやらカミサマになったとしても肉体に限界はあり、もうすぐ命の灯火はうち消え、蛍火ほどのにもなるでしょう。ただ私は生き永らえ色褪せた日々だけで終わってしまうはずだったのです。
だけど、だけど、そこに貴方が、現れたのです。地獄に垂れる蜘蛛の糸の様に。書きながら涙が止まりません。貴方の顔をもう一度だけでも見られた満足して逝ける気さえします。多分そうしてしまえば最も未練たらしく、おまけに貴方を苦しめてしまう様な気がして堪らないのです。


―大好きでした、小鳥遊游架さん。


その一言にぞくりと背筋を冷たいものをあてがわれたような気がした。名前は教えた覚えは無いから祖母が教えていたのかもしれない。
ただ、僕以外の当事者は居ない。調べる術はないと白旗をあげる寸前で祖母の日記を見ることを思い出した。書斎に行って古びた日記のページをめくってちょうど僕と彼女の出会った日の記録を見ることにした。


孫が出来てから会えていなかった【彼女】の自宅へ【僕】を連れていくことにした。【僕】は酷く内気なものですから、私が連れていったのです。【彼女】と【僕】の2人が話している光景は何処か微笑ましさを覚えるものがありました。【彼女】曰く、
「よく喋る子ね。……誰に似たんだかしら。
(くすくす、と笑いながら)
にしてもあの子、可愛い顔立ちね。【祖母】
の若い頃そっくり。(ふふっと笑い)
……ねえ、【祖母】。あの約束、忘れた訳じゃないよね。」


何の変哲もない日記ではあるけど、やっぱりどこが引っかかる。彼女と祖母、二人の間に何かしら決め事があるのだろう。おまけにこの次の日くらいから祖母は衰弱があからさまになった気がする。彼女が何かしらの関わりがあるような気がする。
僕は一旦頭を整理するために外に出た。日差しが夏のそれで秋の到来を一切として感じさせない。

「あ、どうも游架さん。……お久しぶりです」
突然声をかけられふと顔を見ると、彼女があの時のまま、白いワンピース姿でそこに立っていた。

レモンの飴~第3話~

よぉし、次回最終回の予定!
このふたりのお話の結末を見届けようぜ?

レモンの飴~第3話~

僕は彼女の手紙の衝撃的な内容に驚きつつも、必死に彼女の事を調べようとするが……?

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更新日
登録日
2018-10-02

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