朝の来ない国

あさのこないまち、。

 昔々、ある裕福な国の王子がいた、彼はある特殊な能力をもっていた、想像したものを回りの人間にも“追体験”させる事ができるというもの。とはいえ、子どもなので、そうして周りの大人や人間たちに見せるそれは、それは子供時代によくある幼稚な空想にそのものだった、彼が良く読む絵本にでてくるような、現実離れした落書きの絵のような、どこか遠くの神話のある国のそんなイメージの空想ばかりだった。大人たちは、ふいに能力をつかっても驚くものはいなかった。その当時、一番恐ろしかったのは夜の世界に住む魔物たちだけだったからだ。

 ある時からその王子の見せる映像は変わっていった、それは近隣の国々が、魔物の群れに襲われているという噂で王子の耳にもはいったが実際のところ大きな紛争が起きているらしかった。
「王子様、魔物にはきをつけたほうがよろしいですぞ」
世話係はそんな風に王子にはなしていた。

 それから王子はある変った空想をみた、ぼーっとしているとき、朝と夜が決まった回数ではなく、繰り返し繰り返し反復してやってくるという不思議な空想だ、それは彼の能力によって城の者たちの中にも流れていた。
 それは夜と朝が決まった時間ではない世界の話、夜には黒い蛇が住んでいて、朝には白い猪がでる。それは朝と夜のつかさどる魔物だった。

 また少ししたある時期その国に悪いうわさがたった、それは疫病や飢饉のうわさだった、その裕福な国はいつも人助けをして、隣の国や近隣の村々にも援助をしていたので、それほど心配はしなかった、いつも人の助けがあるのが当然だった。しかしそのころの王子の妄想の中では、例の朝と夜の夢の中、ただひたすら夜の映像ばかりがながれていた。
 病弱な王子は、疫病、ではなく長い長い風邪をひいた、その間ずっと夜の映像ばかりをみせられ、家臣たちも気がめいっていたが、昼が来たころ、王子は空想の中、死んだ王をみた。
 「誰かいないか!王は無事か!」
 家臣が確認にいくと、王は本当に死んでいた、それは謀反だった。王子は、その理由をしったとき、はじめて人間の恐ろしさをしったのだった。
 「こんな優れた人間ばかりで面白くもない国、消えてしまった方が清々する」
 謀反の犯人は、王が若いころ家来にした、奴隷の生れの人間だった。

朝の来ない国

朝の来ない国

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-01

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