非実在家族
「返信がありました」
ここ数日近未来的青年はある特殊なアプリにはまっていて、その相手とのやりとりを楽しんでいる。それはシュミレーション系アプリで、見た目はほとんど恋愛シュミレーションゲームと同じ、相手の受け答えもどこか形式ばったところがあり、それは説明によるとAIによる自動生成された受け答えらしい、シュミレーションという名にふさわしい。それは夫婦生活を仮体験するアプリで、仮想の夫婦生活を楽しむものだ、プレイヤー個人情報のやりとりは禁止されているし、仮そめの夫婦ごっこ、本来それはその範疇を超えることはない、だが少年の選んだキャラクターは相手は度を越して変人で、普通は2、3日で別のパートナーと話をするようになるところを、むしろ相手のキャラクターの方から彼と色々なシチュエーションを模索して妄想してはそれをおしつけるようになっていた。青年はAIというには、あまりに異質な一面に気づき、怖くなり、少し別のパートナーを探そうかと考えていた。
「このAIアプリ、ちょっとさ、本当すごいよね、君はよくできてるよ」
「私、AIじゃないですよ」
その一言で、彼は今までのすべてを後悔した。彼女は、追い打ちをかけるように返信を続けて来た。
「これ、夫婦シュミレーションアプリ、出会い系アプリですよ」
人間相手に恋人関係すら煩わしいとおもっていた青年が、インターネット上で体験した架空の“家族体験”それがもたらしたものは、さらなる人間への恐怖感だった。
「あなた、どんなアプリを使っているんですか?僕、ずっと相手がAIでこれは単なるゲームだと思っていたんです」
彼女に確認すると、彼女のほうには、なるべく決まりきった言葉を使うようにと、アプリから文句があったらしい、青年が自分がインストールしているアプリの内容をつげると、女性のほうも衝撃を受けているようだった。男と女で別の宣伝文句を唄ったアプリ、何の理由か、さあ、わからない、だが青年は、今更になって後悔した。
「私、一度仲良くなった相手とは、とことん仲良くなるつもりなんです」
AIだと思っていた相手が、人間だった、そして、彼女に自分が言ってきたことすべてを後悔した。
「君が人間だったらお付き合いしたいのに」
われながらゾットする事を二日前にいったのだ、これを白状することも、それから二日後に起こったこの展開も、今自分を混乱させているすべてなのだ。
非実在家族