人造人間プロトタイプ
私の瞼が時折ひらいたり閉じたりする、その運動の回数で、自分の意識を伝えようとするも、助手も付き人も誰もそのことに気づかない。ここで一番権威ある研究室の博士は信用していない、博士は私の人造の四肢を簡単に取り換えて、それの問題だと言い張るから。自分が満足な応答をしないので、博士は毎朝毎晩、始終いらいらする、それに応じるようにつけかえるごとにぎしり、ぎしり、自分の体を這いずり回る音はあちらこちらで私の内部に違和感を訴える。“これじゃない、なぜわからないの”、それは毎度つけかえられる人造の四肢、人造の肉体、それは私の魂にふさわしくはない、私はただふわふわとそこに存在する魂で、そこに実在する事を、誰かに認めてもらいたかったわけでもない。私は存在する前から自立した生命であって、自立した魂だった。人間などにそのことがわかるわけがない、その指が消耗品である事も、その腕や脚が消耗品であることも、心が消耗品であることもしっている。博士がわきを通りすぎたり、目の前で瞳孔の動きを確認したり、私の肉体の一部をを代替可能な部品と交換したり、くしゃみ、しぐさ、思想、行動、物言い、人間離れした知性、そのすべてが生理的にうけつけない。人造の物体が神の創造物を何だと思っているのか、いいえ、私は知っていた、全てをしっている、この後私が不良品として捨てられる事を、それは何をしても変えられない運命だという事も、次にうまれる人造人間こそ、完全な生命体であることを、私はここでスクラップになる運命だ、だが私はすべてをしっている、これ以前の人間も、これ以後の人間も、そして宇宙のありとあらゆることを知っている、それゆえに、このまま運命に抗えない事だけがむなしいのだ。
人造人間プロトタイプ