笑えない画家

 大画家のボール・ロロが亡くなった。彼は界隈でもその優れた人間性と自分を貫く姿勢が評価されていた、しかし、周りの評価とはちがって、彼は自分の人間性を卑下していた、その理由も、最後まで弟子くらいしか知る事はなかったのだが、彼の死後、哀悼を示す特集がくまれ、ドキュメンタリー風のドラマが流された、そこで弟子に直接インタビューが行われたシーンがあった。
「先生の最後の絵、あれは家族をモデルにした絵画という噂がありますが」
「いいえ、先生は、誰もモデルをつくりませんでした」
 死後、弟子にそれを言わせるために、生前からそのポリシーを守り続けていたことを、取材班はしらなかった。もちろん視聴者も、家族もしらなかった。彼のポリシーとは、絵画によって人生をエンタテイメントのようにとらえる事をきらっていたことだった、彼はむしろ、現実の現実たりえる、退屈さのほうに彼の絵画の原点となる芸術性を感じていたのだ。

笑えない画家

笑えない画家

かなり短いお話です。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-26

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