知らない夜 ver1
更新していきます
序章
リリリリリリ
深夜2時、閑静な住宅街をあてもなく歩く僕を笑うように鈴虫が鳴く。
最終電車が目の前を過ぎてから駐輪場の角の段差で煙草をふかしている。
帰宅することへの諦めと、孤独に酔う。
身体は今すぐにでも眠りにつくことはできるほど疲れていたが、なぜか頭は冴えていた。脳内でいろいろな考えが渦巻く。
家族はもう寝ただろうか、ここにはどんな人たちが住んでいるのだろう、今前を過ぎて行った車はどこに行くのか、_______
始発まであと3時間、、、ここで眠りにつくのも悪くない。。。。。
____________ググ______
膝の上に重みを感じて目がさめる。
、、、
、、、
そこには一匹の猫がいた。
口には花。天竺葵が一輪。
2秒ほど猫と見つめ合う。
猫には似合わない貫禄と、類を見ないほどに綺麗な毛並みをしていた。
蛍光灯に照らされ、花を加えた猫はどこか神々しくて、浅はかな僕を戒めるかのようだ。触れようとして伸びた僕の手に気づくと猫は膝を降りてこちらを振り返った。
また、見つめ合う。
猫は少し歩くとまた振り返りジッと僕を見つめる。『不思議な猫だな』単純な思考が頭に浮かんだ。同時に追いかけたいという少年的な好奇心が働いたのだろう、僕はその猫の後ろをついて行くように立ち上がり尻の埃を払った。真夜中の知らない街で花を咥えた猫とデート。そんな夜があるのも人生かもしれない。
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人生で1番長い夜が始まる。
知らない夜 ver1