ヒーローネクロマンス

 深夜、がしゃがししゃと軽く硬質な雰囲気を持つものが高く合う音。音が響くのは誰もが寝静まる高校の旧校舎裏、その音が響くとき、誰もがその音に言い知れぬ不安と寒気を覚える。それは学校の七不思議、昼間悪さをした生徒の首を狩るある怪物が歩く音をうわさされる。それはたしかにその音で、陰鬱な霧が立ち込める中を、ドクロ頭でコートをきた黒い怪物があるきまわる、その全身には、体から四肢、手や足に等間隔になんの意味か、多くのベルトがまかれている。
《ガクガクッ、ガクッ》
音を立てているのは、彼がその手に掴んでいる何者かの襟首と、そこからぶら下がる衣服の下、服をきた骸骨だ。当の歩く骸骨はガクガクと顎と下あごと上あごがぶつかり、またガタガタと笑うようなしぐさで音をひびかせ、その中から不気味な霧と何事かをもそもそとつぶやく音がする。
「ワハハ、ワハハ、ワハハ」
 彼が何ものを狩るのか、彼がなにものを食い殺すのか、伝説では、彼は中世の落ち武者で、もともとこの近辺にあった城の騎士をしていた、その骸骨は、夜な夜なあるきまわり、ひとつは若いうちに悪事を働くものを取り殺し、もうひとつは、その噂を聞きつけて面白半分に近寄ってきたものを食い殺すのだという。彼が引きずっている骸骨は、彼の仲間でも、縁の或る者でもなく、彼のいた時代の彼の正義の犠牲になったものなのだ。

 ときたま彼に挑むものがある、それは世界各地からやってくる霊媒師だ、彼は霊媒師を殺したりはしない、ただ、ひとつの例外を除いては……。

 「お前は、前世の記憶をもつか」
 
 訪問者が深夜、ドクロ騎士の霧の領地に入るとき、彼は訪問者に、そういう質問をなげかける。地元ではそうする理由は彼の本当の目的のひとつにあるとある言い伝えがされている。彼は、前世の記憶を持つ人間を探している、かつて自分と戦い、そして自分を殺したものや、その敵対していた軍、国民、王族すべてを、転生したかしないかにかかわらず、永遠の時間の中で探し続けているという。

ヒーローネクロマンス

ヒーローネクロマンス

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-25

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