レモンの飴~第2話~

彼女の手紙に描かれる彼女の秘密とは?
僕の感じた奇妙さとは?

「僕」へ
名前も知らず手紙を書くのは些か気が引けますが、1つご報告のため筆を執った次第です。
私は人よりも永くは生きられないので、この手紙が貴方の手に渡る頃にはもう私はいないのだと思います。

まずは鳥籠の姫君であった私に外の世界のことを必死にご教授頂き誠にありがとうございました。ほとんどの物を目に出来ぬまま死にゆくのは酷く物悲しい限りですが、貴方がいなければこの鳥籠には一切の明かりが無かったことが今になって分かります。内気に見えて活発な貴方は私にとって心の支えでした。

次に私について貴方に一切を告げていなかったと思うので少し、昔話にお付き合い願います。

昔、ある所に小さな集落があったそうです。
そこにはある言い伝えが根付いていました。
その言い伝えというのが、まず前提にこの集落自体世の中から異端視されていたというのを知っておいた上で聞いて下さい。
独自の宗教観を持つその集落には、「カミサマ」という役職があるらしいです。
「カミサマ」は宗教的に高度な役割を担っていたと村の文献にも記載がありました。その役割というのが酷な話なんですが、解脱を目指し深い瞑想に入り、結果人々を扇動するという目的のために毎年3人、少年少女が選別されていたそうです。大概は「カミサマ」になる前に餓死しているという噂らしいですが。
とある年、金栄惣之丞(かなえそうのすけ)という人物が選ばれたらしいです。彼は「カミサマ」へ昇華を果たし、全知を得たという伝説が載せられていました。

何故その人物の名前を出したのか、多分貴方は不思議に思われるでしょう。彼は私の表面上としては祖父にあたる人物です。私の家はそれこそ初代から家系を書き続けていますが、そこには祖父と書かれています。
何故さして疑問にもならないそれを私はこのような表現をしたかと言うのが、とても奇妙な話で今日の今日まで未だ誰一人として信じてはくれていません。それを私の唯一知りうる人物の貴方にお伝えします。

僕はそこでふと手紙を読むのを止めにした。
外の空気が透き通るようではなく、どこかむず痒い。家の中に入り、手紙の続きを読むことにした。いくつか引っかかることがある。
彼女の言う「私の表面上として祖父にあたる」という表現。血縁関係に表面も深層もあるわけはないだろうに。

久しぶりに祖母の私物(今となっては遺品だが)のある、書斎へ入った。普段は入らないので多少埃っぽいが、祖母の亡くなった時から時間が止まっている。祖母は毎日欠かすことなく些細な事でも記録していた。5歳の時点では始めていたと聞いたことがある。
僕は書斎から最も古い日記を取り出した。紙の褪せ具合や字の癖から祖母の自筆なのは間違いはない。


今日も【彼女】と~~をして遊んだ。
浮世離れした容姿の【彼女】はまるで人形のように美しく、「立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花」此の言葉は彼女の為に有るのだと悟った今日の昼であった。
(【彼女】の部分は伏せた)

多分これは祖母が書いたものだが、明らかに祖母も祖母で奇妙だ。5歳で書いたにしては
言葉遣いが硬い。多分もう少し歳をとってから再度書き直したとも取れる。としても何か怖い。心の底すらも深く見透かすような祖母の瞳をふと思い出して狂気に蝕まれてしまいそうだ。
僕は一旦眠りにつき、明日に手紙の続きは託すことにした。

レモンの飴~第2話~

さてさて、僕は完全に推測者という立ち位置に立たせて読者と同じくこの事実においてほぼ無知な状態なので、僕に移入していただきたい。
まあ、後後過去編作りますので……よろしくお願いします。

レモンの飴~第2話~

彼女の手紙を読みだした僕。彼女の伝えたいこととは?胸に秘めたこととは?彼女は何者なのか?同時投下の第2話。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-24

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