ある魂より
廃屋となった協会には、今日もたれた電気配線が天井から地面すれすれまでぶら下がっている。電気が通っていないものの、雨漏りでできた教会内の水たまりは、横に並ぶ椅子たちも理由もなく不安そうに眺ているほかない、心配ごとなどあっただろうか、ただその様子だけが心配なようなきもするし、そうでもない気にもさせる。
教会の裏、墓守のいない墓地にも、雨が降っていた、荒れた魂たちが夜な夜な映画や小説の真似事をして人を脅かす案を練っている。けれど一人だけ、美しい少女の魂だけは、あれた教会で祈りをささげていた、それも、ときたまそこにある若い神父が来るのをしっているからだ。
「神よ、寄る辺なき魂たちをお救い下さい」
それは、誰にささげられた言葉か、はっきりとは知らない、ただ少女は、神父が郊外のこの地に打ち捨てられた教会にいつも一人、わざわざ赴き、祈りをささげる。そのときには、何かしら特別な意味のある行為であると感じざるを得ない。もしそれが、裏の墓地に向けられた言葉ではなくとも、だからその日には、誰もが少女の言う事を聴く、多くのその他の魂と少女は契約をしていた、それ以外のときの自由を認める代わりに、あの神父にはいたずらをしないでほしいと。
「どうか、安らかに」
少女は知る事ができない。神父が隣まちからわざわざくるわけは、隣町に何度も何度も、この近くで幽霊が出た噂が流れているからだという事を、それでも少女は、神父の信じるものを、信じる事にしている。隣町からわざわざ祈りに来る神父。その健気さの理由を、決して知ろうともせずに。
ある魂より