偽物ヒーローマント
“君も一瞬でダークヒーローになれるぜ、復讐を誓え、復讐こそ力だ”
気がつけばいつも屋上にいた、カラスに化けていた自称ダークヒーローが自分の目の前に現れたあの時までは。
“いつからだろう、私は感動を忘れていた、同情を忘れていた、人の心を察する事をやめていた”
それは、それには見返りがないと知っていたからだ。
「あんたさ、最近付き合い悪いじゃない」
仕方なしに生まれた学校での友情、私は、どこかでその友情すらも疑っていた、昔、いやな事があったから、もう一度裏切られるかもしれないって思っていた、だから私は、目をつぶった。
“もう一度、飛んでみよう”
自称ダークヒーローは、飛び方を教えてくれた、ときたま彼の仕事を見たが、本物のヒーローの手助けをしたり、邪魔をしたりする傷心ものだった。私はきがついていた、彼は根暗で、彼は悪い博士に改造された人造人間だ。ヒーローは彼に同情していた、それよりも私は彼に同情した。深い事情なんて知らない、だけど、深い事情を知らないまでも、深い絆で結ばれる関係がある事もある。私はいつしかOLになったが、ヒーローマントは欠かさずもっている、カラスが人間に化けるなんて、空想だと思うだろうが、例えば彼等の奔放な生き方にも一つの美学があるともいえる。
私は、それまで、人に気を使い過ぎていた。孤独でありながら、人に気を使った。それは、同情、感動、人の心を察する事、それには見返りがないと知ってしまったから、知ってしまったのに、それを実行する事に意味があると思っていた自分に気がついていたからだ。私は私のヒーローに出会って、いじけるのをやめた。私にはヒーローマントがある、それが偽物であっても構わない。それが私の本当の姿だ。
偽物ヒーローマント