【妖精】三段階創造


 妖精の誕生の手順について、友人についた、半信半疑のまま、そのメモが何かしら発想の転換に役立ちそうな気がしているので、ここにメモをしてとっておく。

 はじめに、妖精は何かしらの水たまり、たとえば湖、たとえば雨降りのあとの水たまり、たとえば水槽や、水桶、そういうものに空気中の魂が取り込まれてうまれる、もちろんそれだけじゃだめだ、だけどそういう場所には“よどみ”が生まれる、それは良い悪いじゃない、ただそういう場所では魂がぐるぐると回転し、妖精になる準備段階が始まっている、鼓動や呼吸を聴く事もできる。

 次に、祈祷や、感情、感動が近くで行われる、そして信心深い何者かが、今日一日の中に“霊的な何か”の存在を深く信じる、その中で、彼等が自分の克服すべきものに気づくとき、その形と姿を模して、妖精たちは“人間の真似事”をする用意をはじめる、それが第二の回転、薄い膜をはって、見えない卵が産まれる。

 第三の異変、それは悪い心だ、悪い心は誰にでもある。下心、そういうもの、だが悪いもいいも、そんなのはきっと幻想。幻想の中に、むしろもっと心落ち着く自分の居場所や、世界のありかを創造するとき、悪意の中から、自分の形を見つけ出すとき、妖精は最後の準備をする、卵の中に妖精の胚がうまれて、魂の細胞分裂が始まる。最期の回転で妖精は殻をわる準備を完全に終える。異物を取り入れた彼女は、やがて羽をひろげ、体と羽をかわかし、やがて皮膚が酸素になれたら、そのときやっと人の気持ちを受け入れて、人々の希望を取り入れて、何でもなかった魂が卵から孵化する、卵は光輝いて、黄金色の割れ目から瞳が覗き、手や足がとびだして、妖精は神を模しただけの、現象の化身として生まれ変わる。

 おまけに、妖精を目撃することのできる人間は、そういう準備が出来た人間だ。それは例えば、そんな手順の迷いの中に、自分を押しとどめておくことのできる人間の事だ。

【妖精】三段階創造

【妖精】三段階創造

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-19

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