転生協会
(こんにちは、ここは転生天使協会です)
「こんにちは」
(あらら、やっと声が通じましたか)
ぼんやりと見えたその人は、何処からどう見ても天使か、あるいは神様のような格好をしていた、白いスカーフのような着物、頭に光る輪がのっている。私は長い髪に手を通して、みだしなみをととのえる、いままで地面にすわっていたが、つめたかったのですぐに体をおこし、暗闇の中にあるとても大きな丸いテーブルの一つの椅子の上にすわるで、そのまま眠りにつき、また3時間ほどがたった。
「こんにちは、今度はおきましたか?」
次は腕ぐみをして顔をつっぷしていた状態で目を覚ましていた、目を覚ましていたということは、すでに聞こえていたという事だ、聞こえていたけど、なんのことかわからず、返事はしていなかった。返事は常におっくうだ。
「ごめんなさい、それで何のごようでしたっけ?」
「あなたはすでになくなって天国にきたのです、その、ですから、あなたは生まれ変わる事ができます、でも心を選んでください、捨てる心、拾う心、貴方の人生をおもいだしてね」
「心」
そういわれても、生前の記憶がない、いいと感じる心も、悪いと感じる心もあるけれど、そうだ、真ん中を選ぼう、こういうとき真ん中を選ぶ人間の心理をいったいなんといったかな。私はテーブルにのった色とりどりの、その人いわく私の心だというプラスチックのような球体から、中間の紫を選んだ。
「その心は、同情ですね、なかなかいい線いってます、あなたは凡人に生まれ変われますよ」
「凡人?」
「ええ、それよりあなた、さっききこえていましたね?さっき、それで、っていいましたよね」
ぎくりとして眼をそらした、瞬間転生は始まっていた、新しい世界の暮らし、その中で唯一私は、その単純な私の心をさがしていた、おちたさきは、名も知らぬ病院、心配そうに見つめ、気が動転した髭面の父と、私をだいてうれしそうな、開放的な安ど感のようなものをもった母親の表情。私の目線は、俯瞰から二人の両親の心配してみつめていたところへ移る、母親は、どこか初めてであったあの人の面影を持っていた。
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