求めていた俺 sequel
第四部 「覚醒のズメ子編」
十七話 深まる謎
午前0時30分。桐生達四人は聖川東学園の校舎の四階の教室の中にいた。しかし訳あって、この四人の中に馬場コウスケは含まれていない。馬場コウスケは現在二階にいる。
「シッ、静かに!」
桐生が人差し指を口元に添えて言う。
「(どうかした?桐生)」
ボソボソ声で訊ねるサファイ。
「今、誰かが廊下を通ったっぽいんだ」
「コウスケ君じゃないの?」
「いいや」
サファイの返答に首を左右に振る桐生。
「今のは二足歩行の人間の足音とは思えない。 お前らは聞こえなかったのか?」
「ごめんごめん、雑談に集中してたから聞こえんかったわ」
どうやらマナトはお気楽なようだ。
「今は”雑談“に”集中“すんな!」
桐生は声が響かない程度につっこんだ。
キリュウの耳に届いたのは『ペタッペタッ・・』という、何かを床に貼り付けるような音だった。
「?」
サファイは江原が手持ちのでかいリュックの中身をガサゴソ漁っている事に気付く。
「江原さん何やってんの?」
「んー?いや、この辺で足音みたいのが聞こえたんっしょ?なら”アレ“が役立つかなと思って・・」
「?」
桐生達3人の視線が江原のリュックサックに一斉に集中する。
「やだぁみんなして私のこと見つめちゃって・・」
江原は勝手に顔を赤らめている。
「はよ出せ!!」
江原のリュックから登場したのは何やら雑巾のようなものだった。というか誰がどう見ても雑巾そのものだった。
「じゃじゃん! ”あしあとをたどるくん“ー!」
「 え? ただの雑巾じゃぁないか。こんなもんが・・」
呆れる桐生。
「失礼しちゃうわね!この”あしあとをたどるくん“ は、確かに見た目はボロ雑巾ぽいけど、ただのボロ雑巾じゃないのよ・・って、ボロ雑巾とは何よッ!?」
「一人芝居やめろ」
「ほら、”あしあとをたどるくん“の中央をご覧なさい。」
雑巾型の便利アイテム”あしあとをたどるくん“の真ん中を指差す江原。そして他3名の視線も自然と”あしあとをたどるくん“へと移る。
「やだぁ、みんなして私の人差し指に見とれちゃって」
「もうそのネタさっき見たよ!そんなクソ寒いギャグで尺を稼がないでね!!」
サファイが鋭いツッコミをぶちかます。
「冗談だって。ほらほら。ここに円形のライトがあるでしょ?この雑巾で廊下の床をササーッと滑らせると・・」
江原は雑巾型のアイテムで一直線に廊下の床を一気に拭く。一見雑巾掛けをしてるだけにしか見えないが・・・、
ピコーンピコーンピコーン
円形のライトが緑色に点滅する。
「足跡センサーが反応したわ!!」
「なるほど、今の雑巾掛けで廊下の床をスキャンしたと言うわけか!」
「その通り。そしてあなたの推測は間違っていなかったようね。」
ウィンクをする江原だが、悲しい事に誰一人彼女に見向きしなかった。
桐生達は“あしあとをたどるくん”でスキャンした後の廊下を眺めてみる。
“あしあとをたどるくん”が通ったばかりの床を見てみると、人間の手形のような痕跡が等間隔に浮き彫りになっていた。
「(これは“足跡“ではないけど・・まぁいいか。どのみち見過ごす理由にはならねぇな。)」
はっきりしたのは、”何者か“が桐生達の教室の近くを通過したことと、床の手形跡を追っていけば ”得体の知れないヤツ“ にたどり着けるかもしれないということ。
「そうと決まれば・・・」
その一方で校舎の二階では、数分前に桐生のグループと逸れた“氷結”の異能者馬場コウスケが電池切れの懐中電灯を片手に、明かりを求めて暗闇を彷徨っていた。
「この学校やたら横に長いんだよな。あいつらがいる上の階に行く階段もフロアの両端にそれぞれ1つずつしかないし・・。くそっ、中央階段とかエレベーターがあれば一瞬なのにな。それよりもなにか照明を手に入れないと・・。あー、お腹すいた!!おっといけねぇいけねぇ。一人でいるとついつい独り言が増えてしまうぜ」
コツンッ。
ブツクサ言いながら道なりに薄暗い廊下を歩いているとコウスケは足元に何か軽い物が当たった感触を覚えた。
「なんか落ちてるぞ」
コウスケは足元に落ちていた四角いプレートのようなものを手に取った。 だが、このままでは暗くてよく見えない。コウスケはキョロキョロと辺りを見回す。 すると。
「しめた!」
運良く教室と教室の狭間の壁に取り付けられた火災報知器の赤いランプの光を発見する。
早速ランプの光に謎の四角いプレートを近づけて見た。
「これは・・・この学校の生徒の学生証か?なんでこんなところに落ちてんだ?」
その学生証には ”三枝一真“ という生徒の名前と学籍番号、そして本人の顔写真が確認できた。
「三枝って確か・・・隣のクラスの・・?」
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