まとまと

yumieisuke

 マティマト郊外で、村人が、見ない顔の人をみた。
「マトマトをご存知ないですか?」
「うちかい?うちはマティマト村だよ」
「いいえ、マトマトはトマトだとききましたが」
「トマト?この村のトマトは有名だがね」

 村人は、畑作業をしていたが、きりあげて村へとその旅人を案内した。その途中いくつか話もした。
「この村のトマトには古い言い伝えはありませんか?」
「ああ、そういえば、考えがまとまるとか、頭がまともになるとか、そんな噂があったね、でも私たちの親の代までよ、そんな噂はね」
 どこか旅館はありませんか?
「食い物を出すところはあるがね、まずそこへいこう、そのあとは、泊まるところがなければうちにいけばいい」
「すみません、おせわになります」
 村に着くと、旅人が考えていたより質素な村で、いくつかの八百屋、商店があるだけ、ぼろぼろの家屋もあり、そこに何百人も住んでいるという村人の話が嘘のようでした、
 旅人は村人に案内をされ、二人で定食屋に入りました、頼んだのは普通のメニュー、出されたトマトは、まだ黄緑色をしていました、あとはごはんに味噌汁、トマトだけ食べないわけにはいかないのでそのときはたべましたが、厄介になったその村人の寝静まるころ、外のトイレで、あとでこっそりはきだしてしまいました、その味も奇妙で、妙にしぶく、そして吐き気を催すものでした。そこで店を出るとき、旅人はこう考えていました。
「この村の人々は平気なのかなあ」
 そうして旅人はこの村に幾日かとどまっていましたが、マトマトの特徴をいくつか発見しました、マトマトを食べて直後の人々はとても活発に動き、普段よりかしこいような気がしていました、ですがもう一つの特徴は、食べてから少したつと、いつもより考えをまとめたり、まともなお話をする事が苦手なように見えました。というのも、旅人が初めて会って、幾日も厄介になっている村人の家でも、その人も、家族の人もときたま、
「なんでこの村にきたんだあ?」
 と何度も旅人に聞いたことを聞き返すことがありました、そのたび旅人は、マトマトのためだ、と答えるのでした。
「早いうちにいなくならなければなあ」
 そう考える旅人の口の中で、マトマトの味が広がっていました、その味は初めて食べた時と違い、甘く、まるで果物のような匂いと、紅茶のようなかぐわしい香りが残っていました。

まとまと

まとまと

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-15

Copyrighted
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