ゼンマイ古人形館

ゼンマイで動く人形を集めた館があります、某県某市、営業開始から一年、寄贈やら、管理者の知り合いのいらなくなったものをもらったものやら、リサイクルショップで買ったものやら、とても古いものばかり集められ、館のガラスケースにいれられています、ゼンマイ部分はガラスの下の板の箱の外に設置してある巻鍵と連動して動く形になっています。彼は毎日好き勝手に暮らしている、かと思いきや、夜な夜なひそひそ話することはあっても、ほとんど自由の効く時間はありません、営業は夜中の3時間を覗いて、ほとんど機械によって自動で行われていて、警備員も外に常駐しているだけで、人は館の中にはいません、いつもは盛況なのですが、そんな中、秋のほとんど人のいないとき、一度だけ彼等のひそひそ話をきいた人がいます、それはひと月に一度、中の点検を行う管理人でした。
「いやあ、まいったよ、僕もそろそろ体を壊してこんな仕事をおえたいんだけどね、人間のいう事をきいているうちはずっとここでこうして働かなきゃいけないし、従順であり続ける限り、僕ら全員、人間の言う事を聞いていなければいけないから、困ったね」
それは、牛の人形と一緒に畑を歩きまわるゼンマイ人形の農夫です、彼等も人間と同じ労働者だったのです。

ゼンマイ古人形館

ゼンマイ古人形館

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-15

Copyrighted
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