トラウマ狩り

 あの青い人影を覚えている人はいないだろうか、一時期私の入院していたB病院の私のいた頭の数字が2からはじまる2××の二階で、噂話になっていたんだ。夜中に2階を歩き回る、幽霊の様な人影の事を。
 井戸端会議が趣味のまだ健康なおばさんたちは、すぐに人様を貶める話に変換する、オカルト好きの連中は、すぐに魂を狩りにきた死神に置き換えていた。でもみんな本当の事はみない、私は、それとはちがって、純粋な、もっと小規模なある噂をきいた。
 「体の調子がよくなったのは、心の調子がよくなったからなんだ、だけど勘違いしないでくれよ、これはおれの実に起こったことで、誰もがそうとは限らないぜ」
 そういって退院したのは、奇跡的に持病が完治して退院した、私の隣室のベッドにいたAおじいさん、入院中、私とよくゲームで遊んでくれていた人、そのご老人いわく、のことだが、私やごく親しい入院患者2人にだけ、青い人影の正体を話してくれた、それによって私たちは入院生活をおびえず過ごすことができた。
 「あれは、昔の悪い記憶を奪い取って、面白い記憶をみせてくれた」
 という、私はその人のことを、じいさん、とよんでいたが、じいさん、どんな記憶をみせてくれたんだ?といったら、私がある男性と結婚する未来だそうだ。私はそれは、記憶じゃないよ、とつっこんでしまった。後にも先にも、ためぐちはその一回だ。

トラウマ狩り

トラウマ狩り

怖い話風です。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-14

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