霧のそこに

朝の匂いがする
ここから見る世界は
果てしなく真っ白で
真っ新だ

そんな世界を
壊したくなる人は
実はたくさんいて
でも、僕は
帰りたい方の人間でもなく
一緒に混ざってしまいたいんだろう
影も残さず欠片もなく

壊すのは簡単
帰るなら佇めばいい
でも、あんなに真っ白で真っ新な
場所
そんな綺麗なところには
もう僕がいることは
許されないでしょう
どちらにしても

それを壊したって
何も、変わらないことを知ってる
そのに佇んでも何処にも得るものはない
それも知ってる
だから僕を呑んでほしい
僕が僕でなくなるほど鮮烈に
けど静かに僕を埋めてほしい

帰る場所等いらない
壊す必要性もない
ただここから落ちれば
きっと白かった頃の僕を
取り戻せるんだ
深い深い霧の果てで

霧のそこに

霧のそこに

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-29

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