しゅるしゅると踏む

しゅるしゅると踏む

短歌十首。

   



   



   

  



   



   



 




細い雨の筋

ひと 懐かしくなる

停まる

唐突に

遠い昔




かちゃりと 

    ライターの砥石の 声

  一瞬が

身震いする

     生きている




・・・・・・緑や 青や 赤がよぎる

孤立無援の足音 

     しゅるしゅると踏む




思い出す雨露はあの日からいくつものわたしがちぎれています




雨にもきっと色があります

この

打ちひしがれた 

孤高の色彩




雨音が

   ちりりと 

    呼吸する

続く日々

ときおりは ひとが かすれて




雨はあの日も海に出会いました

かつてわたしにもひとがいました




雨の織る街

地下鉄

風音

   通りすがって 

   あまりに はかなくて




遠い声

ひとからの笑み

残照

そっと花を手向けたあの思い




雨水が窓際から

ひとを訊ねる

「思い出すのがつらいのです」
   



   



   

  



   



   



 

しゅるしゅると踏む

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しゅるしゅると踏む

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-13

Copyrighted
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