ポスター

 大学のとある友人からポスターをもらった。なんだか自分にはよくわからないのだけれど、それはアニメキャラクターのポスターだった。ずいぶんとフリルの多い衣装を着た、妙なピンク色の髪をした童顔の少女のキャラクターだった。アニメのタイトルは友人が言っていたと思うのだけれど、初めから興味がなかったせいか、今はもう思い出せない。アイドルアニメだったか、魔法少女ものだったか、そのあたりだった気はする。
 最初は「このアニメのことは知らないし、いらない」と断ったのだけれど、その友人は「どうしてももらってくれ」と頼み込んできた。少しばかり変だと思って、「何か事情があるのか」と訊ねてみると、「弟に頼まれて買ったやつなんだけど、弟のやつキャラが違うからいらねって言ってさ。捨てんのもったいないじゃんか」と言う。「それだったら自分なんかじゃなくて、もっとアニメが好きなやつに渡せばいいじゃないか」と俺が提案しても、友人は「俺おまえ以外に友達いないんだよ」と不貞腐れた調子で返し、とにかく丸められたポスターを俺の腕の中に押し込んできた。何か隠されているような胡散臭さを感じていたが、一向に引き下がらなくて面倒だったので、渋々俺は友人からポスターを受け取った。
 ポスターを自宅に持って帰ってきた俺は、自室の壁の空きスペースに、そのポスターを張り付けてみた。妙ちくりんな少女の絵が俺を見つめていた。俺は酷く気味の悪い気持ちになった。現実味のない笑顔を浮かべる少女の目は、一寸の感情もこもっていない、空っぽの二つの穴のようで、それが不快感を掻き立てるようだった。絵なのだからこんなものだろうと自分に言い聞かせてみるのだけれど、美術館で見た絵画の中の笑顔の人間は、こんなに無感情で不気味ではなかったと思った。自分がこういういわゆるアニメ絵というやつに慣れていないだけかとも考えたが、そんな考察なんてどうでもよく、もう我慢できずに掻きむしるように、乱暴にポスターを壁から引き剥がした。その際に多少破れてしまったのだけれど、こんなものは二度と貼ることもないだろうから構わないだろうと思った。
 引き剥がしたポスターは不格好に丸め、押し入れの奥に放り込んだ。すぐにでも捨ててしまってもよかったのだけれど、曲がりなりにも友人からもらったものを、すぐさまゴミ箱へ投げ込むのは少し気が引けた。まあ押し入れの中で埃を被らせて、ふと掃除でもして発見したときに捨ててしまえばいいだろうなどと遠回しなことを考えていた。
 それから一時間も経たないうちに俺はポスターのことを忘れて、大学の課題に取り組んだり、積んでいた小説をぺらぺら流し読みしたりして時間を潰し、一日を終えた。何の問題もなく安らかにベッドで眠り、そして目覚めた翌朝。異変はあった。
 大きくあくびをしながら顔を出したとき――あのポスターのアニメキャラクターと、目が合った。
 俺は最初、その異変に違和感を覚え、しかしその違和感が何なのかはっきりわからず、目を瞬かせた。そしてそれに気づいたとき、思わず上半身を勢いよく起こした。
 ――何で剥がして押し入れに放り込んだはずのポスターが、今壁に貼られているのか。
 ベッドから降り、おそるおそるポスターに近づいた。何の変哲もないポスターである。
 ゆっくりポスターに触れてみる。異常なし。そっと剥がしてみる。異常なし。
 ポスターには少し破れている個所がある。昨日引き剥がしたときに破れた部分だ。念のために押し入れの中を確認する。果たしてポスターは消えていた。今壁から剥がしたポスターが、昨日押し入れに仕舞ったポスターと同一なのは間違いなかった。
 俺は首を捻る。おかしい。確かに剥がして仕舞ったはずだ。何でまた一晩のうちに壁に貼られているのだろう。夢遊病にでもなって貼りなおしたのか。そんな星新一のショートショートみたいなこと現実にあるのか。しばらくその場でうなっていたけれども、もう大学へ行く時間だったし、とりあえずポスターは再び押し入れに仕舞い、準備を整えて出かけた。
 友人と会ったら、あのポスターのことについて訊こうと思っていたのだが、その日友人は大学に来ていなかったらしく、顔を合わせることはなかった。電話やメールの存在を忘れていたわけではなかったが、そんな急用なことでもないし、訊けるときに訊けばいいだろうとのんきなことを思っていた。
 帰宅すると、果たして再びポスターが壁に貼られていた――なんてことはなかった。なんとなくその可能性を警戒していた自分がおり、そっと安堵する気持ちがあった。そんな自分が少しおかしくて、吹きだすように笑った。目を離している隙に壁に貼りつくポスターなど安っぽいオカルトではあるまいし、あるわけがない。きっと今朝のあれだって、何かの思い違いだろう。幽霊も怪異も創作の中にしか存在しないものなのだから。
 俺は急に心が軽くなったような気分で、いつものように飯を食い、風呂に入り、インターネットやテレビを駆使して時間を潰し、ベッドに潜りこんで眠った。明日には何の異変もない朝を迎えるだろう。根拠もなく、そう過信していたわけだが、それは裏切られた。
 翌朝、目を覚ますと、薄ぼんやりとした視界の中で、壁にあのポスターのような四角いカラフルな紙が貼られているのが見えた。いや、どうせ寝ぼけているだけだ、とっさにそう思うのだけれど、視界がはっきりとしてきたとき、血の気が引いた。
 それは見間違いようもなく、あのポスターだった。ポスターの中の気味の悪い少女が、その目らしき二つの空洞で、俺のことをじっと見つめていた。
 俺は飛び起きて、ゆっくり確かめることもなく、ポスターを引き剥がした。びりりっと嫌な音がして、ポスターは右端から中央にかけて大きな破れ目ができてしまった。少女の腹が裂かれている。しかし、そんなこと知ったことではない。ただでさえ普通にあっても気味が悪いのだ。こんなもの遠回しなことを考えて残さず、さっさと捨ててしまえば良かったのだ。
 俺は今日が好都合にも燃えるゴミの日だったことを思い出し、ポスターをぐしゃぐしゃに丸めてゴミ袋に突っ込むと、他の紙ゴミの類などとも一緒に混ぜて、まとめ終わるなりすぐさま近場のゴミ捨て場に、そのゴミ袋を放り込んだ。それだけでは不安が収まらず、電柱の陰に隠れて収集車があのゴミ袋を回収しにくるのを待った。一時間くらいしてからか、近所の住人たちがのろのろとゴミ袋をそれぞれ置いていく中、ようやく収集車が到着した。そして作業員が回収し、走り去っていくところを見届けることができた。
 そこで急に気が抜けて、汚れるのも構わずにコンクリートの地面に尻もちをついた。もう大丈夫だろうと安堵の感情が押し寄せるのと同時に、あんなポスターぐらいで取り乱した自分を冷静に客観視し、無性に恥ずかしくなってしまった。
 俺は情けなく地面に擦りつけていた尻を持ち上げると、何かやましいことでもあるかのようにこそこそとした足取りで自宅に戻った。
 落ち着いてみれば、ますます自分の慌てふためきようが滑稽に思えて、ついつい自虐じみた卑屈な笑いが漏れた。あのただ色付けされただけの薄い紙の何を恐れていたというのか。
 打って変わって妙に愉快な心境で、俺はその日も大学に行った。ポスターを寄越した友人も来ていたが、あのポスターのことを訊くのももう馬鹿らしく、挨拶を交わすだけに留めた。その友人も特に俺に言いたいことはないようだった。
 何事もなく講義をすべて終えて帰宅する。なんてことはない。あのポスターは壁には貼られていないし、押し入れの中にもない。当然だ。今頃はゴミ収集所だろう。もう燃やされているかもしれない。そこらへんの仕組みはよく知らない。どうでもいい。
 そのあとは特筆することもない。いつものつまらない日課を済ませて眠った。
 明日からはまた何の異変もない日常が待っている。ただ大学で講義を受けて勉強し、単位を取りつつ社会進出を待機しているだけの日々が。そう考えると、あのポスターごときでやきもきしていたことが楽しかったことのように思えて、奇妙な寂しさに駆られるのだった。
 微かな謎の感傷を抱きつつ、夢の中へと誘われた。その日は久々に深く眠れた気がする。
 翌朝、わりかし清々しい気持ちで目を覚まし、ぐっと腕を伸ばして身体を起こし、さらに固まった筋肉をほぐすように腰を捻ったときだ。俺は今のこのすっきりした気分も、昨晩の屁理屈めいた感傷も、すべてふっ飛ばさざるを得なかった。
 ――壁にポスターが貼られていた。あの少女のポスターが。
 俺はしばらくその腰を捻った姿勢から動けなかった。ポスターの中の少女は相変わらず俺を見つめている。その何も存在していないような二つの空洞が、俺の視線を吸い上げている。最初に見たときは無感情で仮面のような印象だった少女の笑顔が、今はまるで俺のことを馬鹿にし、見透かし、嘲笑するような笑顔のように思える。
 なんだこいつ。唖然とした心境の内側から、沸々と感情が沸き上がってくる。それは恐怖ではない。怯えでもない。怒りだ。確かにその感情は、怒りだった。
「ふざけんじゃねえよ、クソガキっ」
 俺は突然怒鳴りだしていて、近場にあった目覚まし時計を引っ掴み、ポスター目掛けて思いっきりぶん投げた。薄い紙一枚を隔てて壁に激突した目覚まし時計は、どがっしゃんと嫌な音を立てて粉々になり、床に散らばった。ころころと乾電池が一つ足元に転がってきた。
 俺の怒りはまだ収まらなかった。こいつを生かしてはおけないと思った。ポスターなのに。生きてなんていないのに。殺したい。俺の心には殺意があった。壊したいのではなく、破りたいのでもなく、殺したかった。
 俺はベッドから飛び出すと、何の躊躇もなく、勢いをつけて引き剥がした。少女の腹を裂いている破れ目がさらに広がって、ポスターは真っ二つに破れた。さらにそれを重ねて、また破る。もう一度重ねてまた破る。またまた重ねて――。乱暴な手つきで、ダムが決壊したごとく止まらない怒りをぶつけるように、強く、強く――。
 そのときに気づいた。俺ではない。今この身体を動かしているのは俺ではない。自分の心に怒りが宿っているのは本当だろう。しかし、その怒りは俺のものではない。誰かに勝手に怒りを心にねじ込まれたような気分だ。それにこの気が狂ったような行動。この行動も俺の意志ではない。誰だ。誰がこんなことをやっているのだ。
 紙吹雪のように散り散りになったそれを、床にばらまく。もうポスターの中の少女の面影はない。それでも俺の中にねじ込まれた誰かの怒りは止めどない。俺の身体はポスターの残骸を今度は踏みつける。ばらばらになった紙にそんなことをしても無駄なのに、そんなことはわかっているのに、俺の足はその紙ごみどもを繰り返し、粘着質に踏みつけ続ける。
 いつの間にやら俺の口は再び怒鳴りだしている。頭にもないことを口走っている。
「おい、お前! このっ、このっ! 何でお前なんかが一番人気なんだ! 何で一番はさとりんじゃないんだっ! このアバズレっ! ビッチっ! メスガキっ! 俺は知ってるんだっ、お前がどんなクズなのかっ! お前はどんな男にでも股を開くんだっ! お前はさとりんの正真正銘の優しさに嫉妬して、妙な噂を垂れ流したんだっ! そうだろう? 俺だけはわかってるんだっ! わかってるのにっ! わかってるのにっ! さとりんは死んだっ! お前のせいで死んだっ! 間違いないんだっ! 間違いないんだっ! 報われるべきはお前なんかじゃないんだっ! さとりんだったんだっ! さとりんだったんだっ! 地獄に堕ちろっ! 地獄に堕ちろっ! 地獄に堕ちろっ! 地獄に――」
 俺は何を言っているんだ? 叫びながら、粉々のポスターに足を振り下ろしながら、俺の脳みその片隅の、まだ自我と冷静さを保っている部分は思考する。さとりんって誰だ? 俺はそんなやつ知らない。でも俺のこの口は、その名を叫び、そしてポスターを罵っている。いや、ポスターの中の女に向かって罵っているのか。そもそもこの口は――今この口を動かしている誰かは、何を伝えたいというのだろうか? 俺の口で、何を。
「お前なんか、お前なんか――! ああ。ああ、さとりん。さとりん、聞こえてるか? 俺は今敵を討ってんだ。 きっと討ってるんだ。 そうだろう? ああ、ああ、返事してくれよ、頼むよ、返事してくれよ。さとりんさとりん、ああ、ああ、あああああああー―」
 怒鳴り声は気づけば泣き声になっている。俺は奇声を発しながら、わんわん泣いていた。怒りはもうどこにもなかった。代わりに仲の良い親族が立て続けに死んだような強烈な悲しみが、まるで心を破裂させようとしているが如く、胸の内側でぱんぱんに膨張していた。
 どのくらい泣いたのか。徐々に自分の口から泣き声が小さなくなっていき、顔面どころか服や床もびしょびしょに濡らしていた涙がぴたっと止まったとき、すーっと身体から何かが抜け出ていくような脱力感を覚えた。それと同時に、怒りも悲しみも消え、感情は無になっていた。口の中は、塩の塊を突っ込まれた如くしょっぱさに満ちていた。周囲はポスターの残骸が散乱していて、俺は急に糸の切れた操り人形のように呆けて座り込んでいた。
 しばらくしてようやく動く気力が湧いてきて、俺は散らかっているポスターの残骸を箒でかき集め、ゴミ袋の中へと注ぎ込んだ。目覚まし時計の残骸は分別して別のゴミ袋に入れた。そしてそのポスターの残骸をかき集めた方をくくって、昨日と同じように近場のゴミ捨て場にそれを出しに行った。不思議と昨日のような焦りはなかった。落ち着いた気分でゴミ袋をそこに置き、収集車を見届けることもなく自宅に戻った。それは普段通りの日常的なゴミ出しの動作だった。
 帰ってくると、俺はどっと眠気に襲われて、ベッドにダイブした。そのまま無意識の奥へと意識が旅立ってしまい、液状化するように眠った。起きたとき、窓の外はすでに橙色の日光で満たされていた。必然的にその日、俺は大学を休むことになった。
 それからまた一週間ほど連続で大学を休んだ。全身が気怠さに包まれており、あまりの身体の重さに大学への道のりも行き来できる自信がなかったからだ。しかし一週間も経てば、ようやく身体にぶら下がっていた謎の重石も取れてきたようだった。
 その間、もう二度とあのポスターが壁に貼られていることはなかった。
 俺は久しぶりに大学に行った。食堂であのポスターを寄越した友人と顔を合わせた。挨拶も程々に、俺はあのポスターについて訊ねた。あのポスターによって起こった奇怪な現象を説明し、「結局あれは何だったのか」と。しかし友人は首を捻り、困惑した表情で言った。
「俺おまえにポスターなんか渡してないぜ」
 嘘をついている様子はなかった。心底から心当たりがない風に、友人はあのポスターの存在を否定した。そんなものは持っていたことすらないと。
「そんなはずはない、俺は確かにお前からポスターを受け取ったんだ」と詰め寄ったが、友人は首を横に振るばかりで、「記憶にないもんは仕方ない」の一点張りだった。弟のために買ったものだったはずだし、せめてその弟に連絡を取らせてくれと頼み、その友人の弟にわざわざ電話をかけて問いただしたが、弟の方も「アニメのポスターなんてそんな恥ずかしいもんを兄貴に頼めるわけないでしょう」と言い、むしろ呆れられる始末だった。
 狐か狸に化かされたような気分だった。俺は確かにポスターによる奇怪な現象に見舞われた。そしてその発端は友人からあのポスターを受け取ったことだと記憶していた。それなのに、友人はポスターなんて俺に渡していないというし、友人にあのポスターを買わせたはずの弟も、そんなものを買わせた覚えはないという。もしや、すべては俺が疲れ果ててベッドで眠りこけていた間に見ていた夢のようなものだったのかとも思ったが、あの少女の感情のこもっていない、穴のような目を向けられたときの気味の悪さや、ポスターをずたずたに破ったときの感触は、自分の感覚にはっきりと刻まれていて、あれがまったくの現実のものではなかったなどとは、到底思えないのだった。
 そんな風にこの人生初の怪現象について悶々とせざるを得なかったわけではあるが、何があろうと生活は続く。そのうち単調に戻った日常によって、奇妙な出来事に出くわした恐怖も高揚も好奇心も、だんだんと薄れていった。その最中、いつの間にか友人が大学から姿を消していた。別の誰かから聞いたが、どうにも退学になったらしい。詳しい事情はよくわからない。車の運転中に人を轢いてしまったとかなんとか、そんな話を聞いた。電話もメールも通じなくなっていて、携帯電話が壊れて新しいものに買い替えたときに、その電話番号やメールアドレスも紛失したので、連絡を取る手段はほぼなくなった。今はもうその友人の顔も薄ぼんやりとしか思い出せない。
 一方で俺はというと、無事に大学を合格し、三流の中小企業へ就職して、決して高くない給料を目当てにあくせく働いている。すべてが嫌になって、人類や生命のいないどこかに旅立ちたくなることは多々あるが、まあそれなりに楽しくやっているつもりだ。
 ただ一つだけ、あのポスター一件以来、とある弊害がある。アニメキャラクターが怖いのだ。アンパンマンだとか、ドラえもんだとか、ああいう子供向けアニメのマスコット的なキャラクターは大丈夫なのだけれど、女児向けの朝アニメや、少年漫画原作の夕方アニメや、大人のオタク向けの深夜アニメなんかの、等身や身体の造形なんかはリアルなのに、顔面がデフォルメされている感じの、ああいうやつが――。
 理由はわかっている。どうすれば、それを緩和できるかも。
 だけれど、俺はあのポスターのことについて何も調べていない。調べたくない。
 今はパソコン一つですぐに情報が手に入る時代だ。きっと調べれば何かしらのことがわかるだろう。例えば俺があのとき口走っていた「さとりん」とかいう誰かのニックネームらしき単語。あれを検索するだけできっと、あのポスター自体のことはわからずとも、あのポスターにまつわるエピソードを知ることはできるのだろう。でも俺はそれを知りたいとは思わない。知らない方が幸せなことがある、そう信じたい。本当は単純に自分の臆病さにかまけて、見たくないものから逃げているだけなのはわかっているけれど。
 最近は――いや、わりと前々からではあるけれど――街中にアニメキャラクターもしくはそれらを模したキャラクターたちの絵が溢れている。俺はそいつらを避けて、そいつらの方を見ないようにして、歩いていく。仕事と自宅を往復する道を。死ぬまでの人生を。
それでもたまに、視線を感じる。いやだいやだと思いつつ、ふと顔を上げてみれば、いつもそいつらは俺を見ている。目に見せかけた、二つの空虚な穴で。
 それを見つけるたび、俺の全身の毛穴から冷たい汗があふれ出して止まらなくなるのだ。

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  • 小説
  • 短編
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-12

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