一年の約束 04.二人
俺は友香里を連れて俺の家からなるべく遠い場所へ連れて行った。
あれが友香里の父親かどうかは分からないが、もしそうだとして見つかったら面倒なことになることは分かっている。でもおかしいな、友香里の父親は朝早くから夜遅くまで仕事してるはずだというのに。
わざわざ友香里を探すために仕事を休んだとは思えない。
「康平君...」
「ん?」
急に友香里が歩くのをやめた。
「どうした?」
「......」
「言いたいことあるんだろ?何?」
「...ううん、なんでもない!」
「え」
「ほら!あそこにファミレスあるし寄って行こうよ!」
友香里が近くのファミレスに指をさして、俺の手を引っ張り向かった。
「ここのパフェ美味しい!」
「そっか」
「康平君は何か頼まないの?」
「俺はいいや」
友香里は何をこんな無理して元気出してるんだ。それにさっき友香里が言いかけたことが気になる。
「友香里、さっきお前が言おうとしてたことだけど」
俺が言いかけたとき、友香里が「待って」と言った。
「それはちゃんと後で話すから」
「...分かった」
それから二時間。俺たちはファミレスを後にして近くの誰もいない公園に向かった。公園にあったベンチに友香里が座る。周りはすでに暗い。
「.....」
「.....」
無言が続く。さっきまでの無理して元気を出していた友香里の姿はそこにはなかった。
「...康平君。さっき言おうとしてたことなんだけどね」
すると、友香里がゆっくりと話し出した。
「私、こんな家庭だからさ。すぐ迷惑かけちゃうし」
「いや、俺は別に気にしない」
「康平君は気にしなくても私が気にするの。康平君の家にまで居候みたいなことさしてもらって。本当にごめん」
「いいよ。ていうかそれが言いたかったのか?」
「これもそうだけど、あともう一つ」
もう一つ?
「私、康平君大好きだよ!」
「.....?」
「康平君優しいし!かっこいいし!自慢の彼氏だなー」
どうしたんだ急に。何が言いたいんだ友香里は。
「...私にはもったいないよ」
「...は?」
「もうこれ以上、私と関わったらダメだよ」
「お前、何言ってんだよ」
「康平君がダメになる」
「だから何だよさっきから」
「別れよう?」
それは一瞬の出来事だった。友香里は何を言ってるんだろう。『別れよう』って言った?
「もう私のせいで康平君を振り回したくない...だから...別れよう...?」
俺は言葉が出なかった。
「康平君の彼女でよかった....」
友香里は笑顔を作って俺に向けたが、涙が流れいた。もうわけがわからない。
「もっといい人見つけてさ...!!康平君ならきっといい彼女作れるから!」
「.......」
俺は
「私よりも...いい人いるはずだから...」
友香里しかいないのに
「...そろそろ帰ろうか?今日は荷物持ってもう家帰るね?」
それに今ここで友香里から離れたら。こいつはどうなる?最悪な状況しか浮かばない。
「......ばーか」
「え?」
俺は友香里の頭を何故か撫でていた。
「俺の事嫌い?」
「え.....?」
「どうなの?」
「................好き」
「ならこのままでいよう」
「だからそれはダメなんだって...。これ以上は迷惑かけられない」
「俺はお前からならどれだけ迷惑かけられても構わない」
「.......」
「それに俺もお前のこと好きだし、お互い好きなまま別れるの俺は嫌だから」
「康介君....」
「だから別れるなんて言うな」
「でも.......」
「やっと見つけた」
その時だった、俺たちが話している最中に後ろから低い男声がした。俺と友香里は後ろを振り向いた瞬間、友香里の顔色が変わった。
「ごめんね、友香里が迷惑かけて。友香里を渡してくれるかい?」
この男...友香里の父親か.....!?服装はスーツ姿。夕方に俺の家にいた男と一緒のやつなのか。
「嫌です」
冗談じゃない。この男が父親だ。
「困ったなぁ、やっと見つけたのにここで見失ったらまた友香里をどっか連れて行くでしょ?」
友香里の父親は体つきがしっかりしてるように思える。ここで友香里を連れて逃げても追いつかれるかもしれない。
俺は脳を今までにないほどフル回転さして考えた末の結果、俺は一か八かの考えを思いついた。俺は小刻みに震えている友香里に耳打ちした。
「友香里、俺が手で合図を出したらお前はすぐ俺の家の方向に逃げろ」
「....康平君は...?」
「俺は大丈夫だから」
「大丈夫って...何が....?」
説明してる時間などない。俺は自分を落ち着かせた。
「...よし」
そして、俺は友香里に手で小さく合図をした。友香里はちゃんと走って逃げてくれた。
「おい待て!!」
父親が追いかけようとした、この瞬間を俺は待っていた。俺はこのまま父親に走って正面衝突をして突進するつもりだったのだ。もちろんこれはただのバカで単純な考えかもしれない。体格も全然違う。すぐに投げ飛ばされるかもしれない。それでもやってみないと分からないし少しでも時間は稼ぎたい。
「っ!?」
俺は全速力で思いっきり父親に突進して体勢を崩させた。
「てめぇ、何しやがる!!」
友香里の父親はすぐに体勢を立て直し、俺に反撃しようとしてきた。それ以降は俺は攻撃を避けることだけで精一杯で俺から攻撃することができなかった。。しかし、俺は一瞬の隙を見て俺はその場から逃げるように走った。
「待て!!!」
俺は少し走って近くの隠れれる場所に隠れた。それから少し経って、友香里の父親の姿もなくなり何とか逃げることができた。問題は友香里だ。ちゃんと俺の家に着けただろうか。
「クソ....」
あれが友香里の父親。あんな男と一緒に住んでたのか。俺は少し警戒しながら、俺の家に向かった。
一年の約束 04.二人