アキの空
2016年、夏
はじめて、他人の事をすごいと感じた。初めて、もっと他人を知りたいと思った。初めて、もっと近づきたいと思った。
それなりに友達も多く、それなりに大切にしてくれる彼氏の事も好きだと感じてきた。
でも初めて、自分からだれかに近づきたいと感じた。
アキの第一印象は“人懐こい人”だった。
カフェで近所のお兄ちゃんだった諒先輩に紹介されたアキさんはニコニコと加奈に握手を求めた。
諒先輩に紹介され、アキとはバイト仲間になった。全員が留学経験をもつ事から紹介されたこのバイトはオフィスに通い顧客のメールに英語で対応するという、大学生にとっては少し珍しいバイトだった。
加奈という後任者を見つけた諒先輩は就活を理由にオフィスから遠のき、加奈とアキと週2日、オフィスで2人になる生活が始まった。
英語ができ、学生団体では副代表を務め、男関係に苦労することもなく、大学もそれなりに楽しくすごしている、そんな全てをある程度こなしている加奈にとってアキの存在は刺激だった。
人懐こい人、その印象は徐々に打ち壊されていった。コミュニケーション力が抜群に高く、誰とでも打ち解ける事ができる、でも頭の回転が速く裏では全てを考え尽くしている、近づくにつれてアキさんのすごさを感じ、加奈にとってアキさんが大きな存在になるまでに時間はかからなかった。
はじめて、他人の事をすごいと感じた。初めて、もっと他人を知りたいと思った。初めて、もっと近づきたいと思った。
それなりに友達も多く、それなりに大切にしてくれる彼氏の事も好きだと感じてきた。
でも初めて、自分からだれかに近づきたいと感じた。
アキの空