星の英雄プロジェクト1 歪んだ郵便屋
英雄実験アンドロイドのアデルが火星で目を覚ました時、彼は透明な筒状のラボにいて、ラボとラボをつなぐ廊下は、部屋よりも細く人二人通るのがやっとな程の通路がある、彼は入口のドアの窓からそれを見ていた。彼は14歳にそうとうする身体を持っていた。その体で二足歩行を覚えるまでには一週間かかった。成長するまで、ずっとつきっきりでメイドアンドロイドが世話をした。部屋の中は白く、唯一彼の気を引くものは、いくつかの本が所蔵された本棚と、一週間に一度とりかえられる花瓶の花々だった。彼は、ある程度の説明は受けていた。「お前はこの星の救世主の卵だ」と言われていた。彼はほかの機械労働者や、ほかの、人型の——アンドロイド——よりははるかに知性を備えていて、そういう風に作られた自分に納得もしていた、
彼はAIによってその特別な知性を与えられた。それは、人工知能アースの命令で、機械労働者たちやアンドロイドたちがつくった“人間の実験体”だった。
彼には仕事を与えられた、それは従属の仕事だった、初めこそ真面目にやったが、途中から彼は郵便物を廃棄しはじめた。盗むでもなく、廃棄した。それはすぐに機械やアンドロイドのうわさとなり、アデルは何度も、人工生命アースからおしかりをうけていた。
「なぜ郵便物をちゃんと届けない?」
「誰も喜ばないからです」
何度叱ってもきかず、アースは、この惑星の代理の支配者、なので必要とみて、彼はアデルを呼び出し彼と対話した。これも実験の一環だった。喜ばないのも無理はない、彼は無意味な事をさせられていたわけなのだ。この星で何かを伝える時には、星の唯一の人工知能であるアースを使って話をする、そんな事はアデルもしっていたし、そのときに返事した。
「いつまでこんな意味のない事をつづけるのですか?」
そこは首都クレーターの縮図のような小さな部屋だった。この国の一番偉い人間、アースの部屋で、ミニチュアの都市の中心に、太陽をもしたマザーの“発生装置”があった。アースは指摘されて、思い出す、本来郵便の仕事は必要なかった。それに、この星の機械労働者たちは感情を持ち合わせていない。彼は毎日必要のない荷物と、必要としない人の場所へ届けていた。首都クレーターから、クレーター郊外の、惑星通路を使い、いくつもの拠点へあるきまわっていたのだ。
「割に合わない。ただ届けるだけではなく、対価が欲しい」
「対価?我々労働者にはそんなものはない」
「あなたは労働者ではない」
アースは黙るしかなかった。アースは火星に伝わる宇宙船の神話の話を彼に話した、それは首都クレーターの中心にある宇宙船の伝説だった。それは、この星に送り込まれた何百年も前の昔、人間という人々と、自分たちが一緒に暮らしていたという伝説。
「私は、私たちは、人間を模したものを作ろうとしている」
「なぜ?」
「私たちは人間のために、火星を開拓するように命じられた、だけど、人間をしらない、それが苦痛だからだ」
「だったらそれでいい、英雄が目覚めたら僕に最初に教えてくれる約束をしてくれ。」
アースはそのことを約束した。それから、彼はまじめに仕事をこなしたが、彼自身が笑う事はなかった。アデルの話に納得したアースだったが、同時にさとった、実験体の名にふさわしい、実験体アデル、彼は立派な英雄にはなれない。
星の英雄プロジェクト1 歪んだ郵便屋