眠る人

どこへもいけるのにどこへ行くのも飽きた
うそとはったりにも飽きた、痛みを感じるのも飽きた。
嫌気がさしたら別の場所。
廃墟に未来はない。だから、冷凍催眠する人々の施設を訪ねて、勝手に彼等の気持ちをわかるふりをした。

 僕はたえうるだろうか、あと50年の期間がある、眠り続けるのに、もし。魂は目を覚ましたままだったら——
あなたは、誰かの脳、使いもしない廃棄物の家電と、食べもしない期限ぎれの食品、とさつされる生物群。同じ人間が同じ言葉を吐くのを黙ってみている、一生の半分を終えた人間が、過去を見る事にも、言葉を教える事にも退屈して、また半分の最初からやり直せない事をなげいている。
 子供はすべてを知っているのに、今日も一日悲鳴をあげ、ただじっと世界が変わるのを見ていた、疲れ果てた人間は、その場しのぎの教訓や、善悪の感情を使って自分たちを眠らせた。それは、冷凍された人々には届かないのを知っている、冷凍された人々は、ただ黙って、痛みと苦痛に耐えながら生きる代替可能な何かになろうとしている。だけど、生まれ変わった時に、自分の居場所があるとも限らない。
 人は時に自分が自分であることを喜ぶけれど、実際そこに自分はいない、自分が存在すると思うのは、自分が、どこかに居場所を確認できているから。鏡だ、鏡を見つけた人間は、ずっと自分を見ていくことになる、それは、残酷な事実を語る。今ここに存在するもの以外、本当はここに存在できないのかもしれない。鏡は自分、自分は鏡、人は、自分の文の矛盾を抱えている。矛盾に気がついているのに、嘘に気がついているのに、その教訓を信じる。それが出来ない人は。ただ、居場所を変えればいいのだ。

眠る人

眠る人

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-10

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