第6話ー5

Zin

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 クリスタルの兵士とクリスタル野反重力装甲車、対空迎撃車両を引き連れ、執政官メハは、クリスタルタワーの次に最重要防衛拠点となる軍省本部へと向かう。
 無数の兵士たちが護衛として彼女が乗るクリスタルの球体の周囲に配備されている。
 この物々しい動きに、敵軍も反応するのは当然であり、無数の獣共が群がってくる。
 それをビームやクリスタルの刃で退け、軍省本部へ着実に向かっていた。
 その道中、裸体で放置された複数の女性たちの姿をメハは目撃した。まるで布切れのように、クリスタルの地面に放り投げられ、生きているか死んでいるかも分からない女たち。
 陵辱の果ての姿。白い足の間からは鮮血が流れ、乱暴を受けた身体は、力が入らないのか、動きはない。
 すぐにでも救出したい気持ちをメハはしかし圧し殺し、今の最優先はこの惑星のことだ。
 彼女の役職が、倒れている女性たちを放置せざる負えない状況に追い込んでいた。
 それが悔しくて、拳を握っていた。
 必ず、この報いを受けさせる。心中でメハは静かに囁いた。

 軍省本部の周囲には、クリスタルの防衛壁が展開され、兵士たちが防衛していた。
 中空にはドーム型の電子シールドがはりめぐらされ、空からの攻撃にも防衛していた。
 メハ率いる隊列が壁面へ近づくと、クリスタルの壁面の一部が開閉、大勢の兵士が迎えた。
 壁面内部にもやはり負傷した市民が保護されており、難民キャンプのようになっていた。
 市民たちはメハの姿に希望を見出したのかすがりつこうとする者もいたが、兵士に止められている。
 急ぎ足で軍省本部へ駆け込んだ彼女は、内部も負傷した兵士に覆われているのを横目に、急ぎ参謀本部へ向かう。
 巨大な司令室の中は混乱の極みに達し、室内の空中に浮かんでいる参謀本部の椅子に座る参謀本部たちも、頭を抱えていた。
 長いジェザノヴァの歴史の中で、首都まで敵が攻めてきたのは初めてのこと。混乱も当然であろう。
「陛下のご命令で、前線の軍団を呼び戻しました。数日中には首都は平穏に戻るでしょう」
 細長い顔の、栄養が足りていないような参謀が言う。
 これに執政官は否定的だった。
「それでは前線が一気に崩れる恐れはありませんか?」
 敵対生命体の問題も抱えている前線から兵士を撤退させるのは、あまりに危険な気がした。
「続くはなりますが、各方面軍団より半数を呼び戻しました。前線の維持に問題はありません」
 そうか、それならば。と、少し光明が見えた気がして、安堵に反重力椅子に身体を埋めた。
 が、間髪を入れず危機は彼女に迫った。
「敵戦艦、接近してきます!」
 クリスタルのゴーグルをつけたオペレーターが混乱の中で指令室に叫び声をあげたかった。
 すぐに外部の映像がホログラムで、デカデカと指令室の中央に示された。
 そこには空中で停止していた黒く錆びたバシャラハ国の軍艦が船主を軍省本部へ向けて降下してくる様子が映し出されていた。
 参謀の1人が緊急事態警報の命令を下し、オペレーターが全館に警報を鳴らした。
 兵士たちは一斉に戦闘準備に駆け出し、市民は建物の内部へ避難する。
 が、準備を待つほど敵に甘さはなかった。
 船主がシールドへ接触、シールドが外部からの凄まじい圧力でガラスのように砕け散り、クリスタルの防御癖を砕き、頭を軍省の前まで突っ込んできた。
 そして船主が開閉すると、バジャラハ国の獣たちが、白刃を構え殺到した。
 軍省を守る兵士たちが敵軍を食い止めるべく、クリスタルの甲冑を揺らしながら敵軍と衝突する。が、敵軍の数は想定を遥かに超えていた。凄まじいスズメバチの大群の如く、軍省敷地内へ殺到すると、恐れることなく錆ついた鎧を揺らし、巨大な剣を振るって、ジェザノヴァの兵士を次々に殺戮していく。
 そして軍省のクリスタルのドア、あるいは壁面を破壊するとそこから、濁流のように建物内部へ流れ込んでいった。
 建物内部でも、クリスタルの防護壁、電磁シールドで敵を防ごうとつとめる兵士たちだったが、恐れを知らないとはこうも圧倒的なのか。敵軍の兵士は死を忘却したかの如く進軍、防護壁もシールドもものともせず、ジェザノヴァ兵が放つビームで頭を仲間が撃ち抜かれても感情なく前へ進む。
 そして瞬く間に指令室の分厚い扉が破壊され、中にバジャラハ国軍が攻め込んできた。
 抵抗する兵士もいるが指令室に居る兵士のほとんどはオペレーティングを担当する兵士であり、武器の携帯はしているものの、戦うすべは防衛をする兵士たちよりは劣っていた。そのせいもあり、指令室の占拠は時間をようすることはなく、スムーズに遂行された。
 メハはこれに苦々しいい顔をして、中空の参謀本部から下を見おろした。
 周囲の参謀たちも右往左往と頭を必死に回転させて、打開策をめぐらせるも、ここまで敵が攻めてきたのはジェザノヴァ国開国以来初めてのことで、頭にはなにも浮上してこなかった。
 ジェザノヴァ兵士たちの中から抵抗するものが現れなくなると、バジャラハ国兵士たちの動きは停止する。するとその奥から悠遊と血なまぐさいクリスタルの通路を抜け、指令室に入ってきた男がいた。
 バジャラハ国元首ゴーゴナ本人である。
 メハはまさか元首自らが前線に来るなど思いもしておらず、唖然と口元を抑えた。
「5800兆もの超銀河団を統べる星間国家ジェザノヴァが、これほどまでにあっけなく落ちるとは面白くもない」
 凛然と褐色の上半身をむき出しにして、背中に黒いローブを垂らしたゴーゴナ元首は、鼻でジェザノヴァの手ごたえのなさを笑った。

ENDLESS MYTH第6話ー6へ続く

第6話ー5

第6話ー5

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-10

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