皮肉男
皮肉交じりに憎々しげに、憎たらしくも卑しい笑いをする、そのくせ卑しいあごひげが,彼の存在意義を意図せずこの世でもっとも憎たらしい存在へと昇華する。私は賞賛しよう、ある種、私の中で時を超えた、彼という、彼の存在を、存在意義を、好意とは別に最も証明しうるのが私であろうから。
彼はどこから失敗したか、いいえ、彼の頭の中には、失敗という概念すら存在しない。今現段階では、もしこれを読む前の人しかこれ以前にもこの後にも、先にも。世界に一人しかいないというならば、彼の存在は、彼の本当のところは、今でしか、この私にしか認識できず、その寂しさは計り知れないものだけど、社会的評価は、彼を評価し続け、あるいはそれがうわべだけのものであろうとも彼を評価し、私はある意味では彼に利用され、その社会的評価に従順であろうとし、うそをつくときの私は彼を評価するといううわべだけの言葉を持ち歩いて回る人形かもしれない。だとすれば、もっとも彼を嫌う選択をした私は、私は彼のうわさの発信源なのかもしれない、私はそのとき偽りの私を作りだすのか、矛盾だ、だとすると私は私の中の彼の評価に伴って私の存在意義さえも疑うという螺旋階段状の迷路へただ落ちるように下っていくことになる、奴隷のように従順に。
それは、兄だったか、父か、弟か、親族か、いいや、私はしらない、覚えていないんだ。私は、私の中の誰を嫌っていたのだろう。孤独がそうさせるのだろうか。それじゃない、ただそれだけの問題ではない、でなければ私はそれを、そんなつまらないことを、ビールを飲みながら、誰もいない孤独な天上と、その上の屋上から、景色のいい星空さえ眺める事も選ばなかった。じゃあ何なのか、彼は誰か、あの髭はだれのものか、オールバックの髪は、私は気がついたのだ、それはあるとき思い出し、またある時忘れなければいけない存在だと、それは私の敵意だと、私が何らかの存在を拒絶するために、私の中に作り出す壁でありその肖像だと、それはレンガで、容易には崩れない、崩れなかった、重機も平和も、人出も士気も必要とはせず、簡単に私一人の自由でくずせる、私はそうと知った今。それが一体誰だったのかをすでにしっていて、ただそれを思い出す作業にいそしんでいて、その作業にどこか懐かしさを感じているのだ。私は今まで誰を嫌ってきたのか、思い出せない事が悲しいのか。
皮肉男