美しくあれ

1、

シドニーは言った。

「彼はポルカ。またの名を幻術家と言う。」

研ぎ澄まされた感情は、闇の奥へ。

しばらく問答を交わした後、源泉の中央に位置する

高架橋で立ちすくむ。

囲炉裏の後は、噛み砕かれた滅相もない語弊と、

道端に閉ざした猛烈さに寄与する。

身の程知らずのポルカ。

めそめそするな。

開脚。


2、

一番に理由が出たのは、後の者に差し支えない轟きと

身をこなすレベルでの強引さ、

または、侮る視界に羽ばたくメゾンの群れ。

気にするな。

いや、それほどでもない。

憩いの行為と、蔑まれた南の堤防だけが、

シドニーの胸の窮屈さを確かに拭い去った。

「見たか。」

雨宿りして、

その感情を手のひらに宿して…。


3、

追憶。

高架橋の前に、胸をときめかす慟哭の彼方。

J、A、S、K、E

存在の証明を、とりあえず。

総員の駆除みたいな思考の錯覚で、全くもっての他になる。

パタッ、と気の許す限りの砲煙の最中、

ポルカはジェシカに詰め寄った。

見事な再来か、由々しきアリバイか。

かじかんだ手に触れたその指先に

なじるような鼓動と、幾万羽のエリオット。

存分に、狂おしく

ただその悲鳴の羅列が

悲しみの掟を突き破りたかった。


4、

数多の帰路を打ち溶かす明晰な回路。

しばしの饗宴から踊り子の計算軸が、

見るほどに艶やかな放蕩さによぎる識別の風格。

「ドン・ジョンという男を知っているか」

飽くべく要求に見過ごされた知性は

華々しき了解のもとに、染み渡る結構な間。

どう吹き込んでも争いを束ねる慎みの超越に

みごと、敬虔な萎縮さと、ほのめかす主治医の態度。

誰か。

渡し船を再開したい。

回り込む必要があるのか。

それを頭で考える。


5、

動じず、劣化したバーナーも功を為さず、

ある程度、分かり合えたご隠居様のど素人。

粘り強く、そして賢明に

今一度、口実を不名誉としたレスポンスをさりげなく

毎度だらしない判別、または感激の情緒を

白けた奉納ぐらいの、足すべき荒波と同時にして。

「暗いぞ!」

豪華な返答は、それだけで未知数の長話。

半分、喰らいついた永眠へすがる篭居のように

紅一点、華々しきかなセオリーの大動脈。

またの名をアポロと言う。

悲しみだけを抱きしめて…。

存在だけを否定する。

あなた様が。


6、

真面目ぶった霊魂じゃない、幅を利かせたマルチーズでもない。

そんなもので、ある輝度を冷めそやす意味のある行いを成せるはずがない。

中身の抜け落ちた、水準での理性を奮い立たせ

ポルカは、川で溺れそうになった。

「行いよ!見ず知らずの人よ!なぜ私を蔑むのか!」

さぁ、旅に出るのだ。

旅へ… 旅へ…

締め付けられるんじゃない! 解放されるんじゃない!

命だけの叫びは、もうゴメンだ。

わかりやすい供述であればこそ、全く屈託のない失踪をもとに、

願いを解く従順なカテゴリーは鷲掴みのトタン小屋に、

ペタンと、トタンと、ペタンと、

あら詐欺泥棒ではないか

そりゃ不敵なもんさ

そりゃそうさ


7、

マッチ棒、と噛みしめる。

値段の割にはかなり経った蝦夷風の不未来。

取り込んだポルカに集積する、ジェッソ。

ジェッソ、ジェッソ、ジェエソ。

アー、マー、ミラーイ!

(こんな感じで、)そん時のノリで、サッとあまつさえ。

立ち去る面倒な故郷が、私に生きることを許さなかった。

「見たか。」

あっそ。

振り向くな。前を見ろ。上を見ろ。

侮るな!吐き出せ!吹きこめ!

おどろおどろしいか。少年。

彼は見たか、それは問題ではない。

判別である。

「見事に。」


8、

あんな風に怒った嫌いがある防波堤を横切るカモシカの列。

界隈に象った形跡のある風量のアンタッチャブル。

まぐわいと、その時々に奏でられる赤面の構成。

美しさ。

誰も悲しまない。

けど、これはアナタの解き方。

これだけでは、頓服の要請をさしずめ不慮の電波塔から

見下ろした風土までの功績を咎められない。

無理をしてまで、現実と並走する、あくまで未来の…

あくまで未来の考慮に身を閉ざしている場合ではない。

「またか。」

そういうことです。

あなたは理性的すぎる。

もっと感情を表に出したらどうか。


9、

どう考えたって、考えられない。

私の罪にいざとなれば気をつけるだけの嘲笑と判別式を、

確固たる自信をもって、風体の為すばかりか阿弥陀くじばかりではないか。

それにしたって、窓際に立つ寂しさを空虚の谷に落として

ゼロから戻れるように、はみ出した暴れん坊にそっと撫でるように

明日はどう考えたって来ないのではないか!

来ないと振る舞う鋭敏な君に問う。

「はたまた原始に、非常に原初的に、地の果てまで追う覚悟があるのなら

なぜ君と編み出した未曾有の大地に心を埋めることができなかったのか。」

素知らぬ顔をもてはやし、後のない光臨と演劇はその衣を燃やし、

かの者は言う。

「遊びと振る舞いを分ける準備を怠ったのが罪ではないか。

相当の互恵があるのなら、身を費やす過度の酔心と、心構えを我に分け与えよ。」

その彼は、かの者ではなかったか。

鋭敏。


10、

辞退するほど、かまっていられない。

満を持して打ちとかれた草稿は、羽のように導かれ天を舞う。

またポルカにもきっと、お嫁さんができるよ、

とかの者は言ったが、私はことわった。

以来、原初的な感情を知るものはいない。

その必要があるのかも人知れず、

ただ、その最中を彷徨っている。

「見たか。」

そうか、私は気づいた。

暗闇にある私の神殿をこそりと開けると

また散らばった感情が、此の期に及んでいる。

まだ見ていない。

あの時だけは…

さらりと…

夢で…


            <おわり>

美しくあれ

美しくあれ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-09

Copyrighted
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