影踏みマン
影踏みマンの正体はなんだったのか、昔々、知り合いのある男の子が子供の頃、影踏みマンという遊びがはやっていたという。tそれは子供ながらの遊びで、でも、ローカルもローカルな遊びで、ほぼ彼らのうちでしか知られていないものだった。影を踏まれた人間が、ゾンビのような役割をして、逃げ回る、まだ影を踏まれていない人間を探していく、という、鬼ごっこの進歩版のようなものだった。ただ一時、奇妙な事が起きたことをのぞいては、その遊びは、ほほえましい少年時代のいい思い出だったのかもしれない。
そのころ話をしてくれたA君は、仲のいい友達たち4人組の中で唯一距離のある場所に住んでいて、帰り路も一人になる事が多かった。だからさびしくなって“一人影踏みマン”という遊びをやっていたのだった。それは、通行人の影を踏んで、気づかれないようににやにやする、というだけのほほえましい子供の好奇心のいたずらだったが、あるとき、一人の男性の影を踏んでしまったことから、その事情は一変してしまった。その人は——かげそのものだった。——それから見る人、見る人、影を踏めばみんな、“立体的な影”と実体とが入れ替わってしまう、色のある実態は、まるで水たまりに映る映像のように、平面の映像になり、変わりに彼の眼には、黒い立体的な“影”が人間として見える。順を追っていうと。ある日のこと、彼はいつものように、登校中、一人影踏みマンに挑戦していた、駅の近くやコンビニの前、たまに人に奇異の眼で見られたA君だったたが、学校への近道としている、校門すぐ近くのある路地裏の小道に差し掛かったとき、角にある電燈の影が伸びているのが、まるで人のように見えた。なので、彼はその影を踏んでみようと思ったのだが、それをした瞬間、彼の背筋に悪寒が走った、その瞬間からだ、彼に異変が起きたのは。その後通学途中合う人合う人の影と実体が反転して見えて、彼は酔ったような気分になっていった。学校についたころにはへとへとで、その日、一日中保健室にいたのだ。
その後、他の友人は普通に一日を終えたのだが、A君だkげあ、今日見た現実について、どうしても一人で耐え切れず、ついには、下校前、いつもの4人でグラウンドで遊んだあと、一人大声で泣き出してしまった。
“影踏みマンがでた、影踏みマンがでた!!”
といって泣き出してしまったのだ。
ほかの友人が事情を聴くと、例の電柱から延びる、まるで人影のような影を踏んでからというもの、ほかの、いたって平凡な人間の影を踏んだとき、
“影と人とが真逆にみえる”のだという、それは単なる幻覚の作用におもえていたが……。その後校門がしまるので、場所を変え、近場の公園で、友人皆で彼の相談に乗る事にした。そのうちに当面の対策として、意図せず“一人影踏み”をしないようにと諭され、彼もそうしていたのだが、彼には、友人たちにも言っていない事があった。
それは、影踏みマン、でみた世界、その異世界の“影”は皆一様に、彼に対して
「見るな」
と語り掛けていたことだった。
友人には、自然に治った、といったが、実際は件の電柱のそばで、みない、といった事で、一切その後、同じものを見なくなった、という事も彼だけの秘密だ。
影踏みマン