厭世仮面協会

「昨日とは違う生活がしたい」
 キャリーがいった。
「それでも、似たようなものがいいわ」
 ヨンドがいった。
「協力しなければね」
 エドガーが言った。彼等は皆会員だ。
 小さな宗教で役員も会員も同じ数しかいない、10人前後で常に運営している。ただひとつ、信条があった。
「苦しい昨日とは違う生活がしたい」
 会員におけるルールはただ一つ、毎日の会議で、前日に不運があった人間が、同じく前日に不幸だった人間と、精神を交換する。これも、近未来の、人間が代替可能な肉体を手にして、精神がデジタル情報と化したからこそできる事だった。

 キャリーは、かつて恋人にひどい振られ方をして世の中が嫌いだった。
 ヨンドは、子どもの頃、虐待を受けたまま、大人になった今でもフラッシュバックに苦しめられている。
 エドガーは、昔から人間世界になじめず、いつも自分と違う自分が、自分を演じている事がある、未だに人間であることに違和感がある。
 
 仮面協会は、彼等に半分だけ生きる意味を見出した、協力して生き抜くことと、半分の本性を、吐き出す場所があるという事だった。

厭世仮面協会

厭世仮面協会

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-09-06

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