魂チャージ
(携帯魂販売店)
と書かれた看板のある背の低い前面がガラスばりの建物に一人のアンドロイドが入っていった。物珍しそうにしていたのは、青いTシャツに、流行りの、心臓柄のズボン、最近再び流行りだした先進的な、穴の開いたハンチング帽をかぶった子供だった。彼はうらやましそうに、あるいは貶すような表情で、指をくわえて中に入っていくアンドロイドをみていた。アンドロイドの様子は一般的な成人男性、といった様子で、中に入ると、こちらには目もくれず、しかし少しおどおどした様子で、待ち時間をパンフレットを読みながら潰している様子だった。その子供の周りには群衆が集まっていて、彼と同じように入口に集い、彼が出てくるのをまった。やがて数十分もすると、すぐに中から、さっきの、質素な服装をして、帽子で目を書かくした中肉中背のアンドロイドがでてきたのだった。すると同時に、群衆の中の一人が、彼が外に出た瞬間に、自動ドアの方に向って尋ねた。
「魂をチャージするというのはどういう感覚ですか?」
アンドロイドは突拍子もない問いと。販売所の入口に物珍しそうに集った、その群衆をみて、そのほとんどが人間だというのを確認した後で、
「あなたがたが、感情の起伏を持つのと同じように、我々もそれを必要としています、しかし我々はそれをお金によって購入しなければいけない、ただそれだけのことで、本質的にはあなた方と変わりがないような気はします」
その中の一人、立派な顎髭を蓄えた、貫禄のある老紳士がふいにまえにあるきだし、そして群衆の一番まえに踊りだし、杖のさきを空に掲げて、彼に問うた。
「あなた方にも人権が必要だ、だがこんな風に、私たちが珍しそうにしている事も、少し寛容になっていてほしい、我々も、おかしな感情を持っているのだ。あなた方からみると、異質な魂と感情を持っているのかもしれないのだから」
そしてじっと見つめていた、相手は帽子をとると、中肉中背の、きっと家庭を持っているだろうという一般的な父親、といった風体をあらわにした。そしてそのアンドロイドは、群衆にむけて優しそうにほほ笑み答えた。
「いずれわかりあえるでしょう」
悔しそうに黙り込んでいた先ほどの少年は、耐え切れずこんな言葉をいった。
「僕は、魂は一つでもいいよ!!ただ名前だけだといっているのはわかるけど、感情を金銭で購入しなければいけないアンドロイドは、劣等種だ!!」
そういうと群衆はざわざわと声をあげ、少年に同調するわかもののしばらくの間さわぎ、場は騒然としていたが。先ほどの老紳士が躍り出てなんとか少年をなだめた、それでも少年は怒りのような表情をむけ、アンドロイドに言い放つ。
「僕はアンドロイドの奴隷が欲しかったのに!!気持ち悪い!!ゲエ!!」
驚いたアンドロイドの男性は、しかし、すこしまた含みのある表情で、優し気にほほえみ、こういった。
「ゲエ!!か、君もまだ、人間の肉体にすがりついている、それはあなたの自由だが、アンドロイドの人々にも、私だけじゃなくて、もっと多くアンドロイドにも、そういう、本当の肉体が必要なんだ」
ぜだか群衆やら、通行人やらが、納得したように拍手をして笑った。
魂チャージ