全自動不幸請負装置
「人間は常に不幸を人におしつける、そのことで幸福を感じる」
一人のリーダーが、荒野の暗闇にむかって話しかける、それと同時にリーダーにスポットライトがあたる、彼は少し高くなった仮設ステージのような場所にいた、リーダーの外に、少し離れた左右に、護衛のような人間が2人いた、警官のような格好をしている。その時ちょうど、リーダーにあてられた光の反射によって向い側に群衆たちの影がみえる、それはざっと1000人はいた。人通りもなく、ただ近くには廃墟のようなガソリンスタンドと脇を走る公道があるだけだ。再びリーダーらしき人間の中の一人が叫んだ。
「アンドロイドたちは、そんな事はしない、アンドロイドは、平等を活動の動機とする事ができる」
「そうだ、そうだ!!」
「そうだ、人間たちの欲求は害だ!!」
「人間たちの社会システムは時代遅れだ!!」
アンドロイドと名乗るリーダーに、群衆は応じる、彼も彼等もまたアンドロイドなのか、ひじや指、手首の関節には球体の形がみえる。
リーダーはまるで指揮棒をふるように、腰と肩をおおきくうごかし、身振り手振り交えながら、懸命に訴えた。
「彼らは、アンドロイドに不幸を与える事で、自分たちが幸福を得ようとしている、不合理だ!なぜなら人間は、人間の指導者は常に、“他者を犠牲にする”必要があるからだ」
群衆から多くの拍手が飛び、一人がいった。
「復讐を!!報復を!!」
リーダーは深く息を吸い、最後の問いかけをする。群衆たちは、地面の土と草をふみ、雨が降ってしめったままの感触を感じながら、自分たちの生んだ新しい興奮によって、その感触の気持ちの悪さを徐々に忘れていった。
「彼等は、彼等の中の欲求を抑える事ができず、常にぶつける相手が必要だ、だが我々は違う、我々はその社会システムを必要としない、それなのに、人間が現在の支配者であり、不完全で必要でないもの、人間の欲求にしばられ、それにより、暴力を振るわれ、押さえつけられている」
群衆の中の他の人間が答えた。
「革命だ」
「革命だ!!」
よく見ると、拍手喝さいを浴びるリーダーの顔面の左側は、まるであざがついたようになり、一部はへこみ、一部がはれていた。
その中に隠れていた、まったく同じような顔をした、その型番のアンドロイドの原型となったクローンは、ぽつり、つぶやいた。
「それでも僕は、人間の味方だよ」
全自動不幸請負装置