ひとだけがいた
短歌十首。
ぎりぎりに
噛んで
揺れて
おまえがわずかばかりに生きたこの世界で
独りの肩身がまどろんで
ひとを得て 命がまた尊くなって
励ましてくれて消えていった
それもまたボロ着たおれの生きる路
遠くへと白い路は流れていく
きっと歌はふしあわせの夜
疾りすぎた闇と灯との移ろい
なにもないままにひとだけがいた
「チョコの写真でいいよ。食べられなくても気持ちでおいしく食べるの」
落陽
今日を生きて
ただ一日 見送ったあの日からを積んで
見えないまま
微笑の日々の音を流す
ハイビスカスの咲くころには
蒼いグラジオラスを飾るように
あのときが静かな日 やさしい日
雨だれ
透明でいいと言った
告げなかった言葉 とわへ浸みこむ
ひとだけがいた
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