ニュースアイドルグループ

専属運転手の運転する車内で、後部座席にすわり、敏腕プロデューサーが溜息とともに言葉を吐いた。
「最近うまくいかねえなあ」
それはアイドルグループごとの評価や実績表だ。最近調子がよくないのは、ニュースアイドル。として押し出しているアイドルグループだ。ニュース番組をもち、あるいはインターネット上でニュースの解説をしたりする斬新なグループ、だがおかたさと、アイドルたちのイメージと違うような番組内容に、はじめこそ人気はあったものの、すぐに飽きられていってしまったようだ。
「もうだめかなあ」
そういったとき、運転手がつぶやいた。
「僕は好きですけどねえ、でも、人気をとりにいく姿勢が強いと、ちょっと怖いですよねえ」
「え？」
「あ、いやすみません」
「いいよ続けて」
　実は、と切り出した運転手は自分も自分の娘もそのアイドルグループが好きなのだという。自分のさっきのつぶやきは、娘の言葉をそのまま吐き出したようなもので、娘いわく、“昔ながらのアイドルのようなイメージ”があるそうだ。自分の身の回りでも親子でそのアイドルを応援している人が多いという、プロデューサーはここにきて、あるコンセプトに気がついた。
「そうか、斬新である事に飽きて来たころだから、彼女たちのデビューのころのコンセプトは、たしか“古き良きアイドル”」

その後アイドルグループは地道に長い活動をつづけて、外にない価値観をもつアイドルグループとして細く長く生き延びたらしい。