すくらんぶる交差点(2)

二 T市駅前

 午前八時。JRT駅に電車が到着。次々と乗客が押し出される。通勤、通学のサラリーマンやOL、学生たちは改札口に流れる。我先に行こうとするが、そこに意思があるのかどうかわからない。ただ、毎日の繰り返し、ところてんが押し出される風景だ。駅の構内を出るとそこは広場。信号は赤。みんな立ち止る。会社や学校は、横断歩道を渡った先だ。広場にはバスターミナルが併設されている。いつもよりも、いや、いつものように一分から二分遅れてバスが到着。市内のあちらこちらから何台ものバスが、この駅に向かう。バスのブレーキ音、ドアが開く音がするたびに、乗客はバスを降り、広場へと向かう。
 駅の近くは港だ。フェリーや旅客船のターミナルがある。そこからも汽笛が鳴るたびに、人が押し寄せてくる。海の波はおだやかだが、人の波は騒がしい。船が到着する際に起きた波に乗ったまま、人が押し寄せてくる。その勢いも信号の赤で止まる。横断歩道の反対側には私鉄の駅がある。JRやバス、船に乗り、会社や学校に行く人々たちが降りてきた。広場の地下には駐車場と駐輪場がある。自宅から自動車や自転車で通勤してきた人が、駐輪場や駐車場に地下に吸い込まれ、再び、湧き出てくる。
 東西南北、上下左右、スクランブル交差点を取り囲むようにして、人々が信号の色が変わるのを目の色を変えて待っている。交差点の中では、バスや自家用車、タクシーなどがひしめきあうように走り回っている。車間距離はほとんどない。車一台どころか、タイヤ一個分も開いていない。数珠つなぎのように、回転寿司のカウンターに乗った皿のように、金魚のフンのように(一体、どの比喩が適当なんだ)、とにかく、ごちゃごちゃしている。(うーん、擬態語で逃げたか)

すくらんぶる交差点(2)

すくらんぶる交差点(2)

交差点に取り残された人々が、取り残されたことを逆手に取って、独立運動を行う物語。二 T市駅前

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-27

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