五時のチャイム
短歌十首。
おまえが遺してくれたおれが
生きられたら うれしい
死ねたら うれしい
ひとを編んで
いくつもの夜から
たどりついて たどりついて いつかを
鮮やかに映るままが
かなしくて
うっすらぼやけて
すこし幸せ
本当にかなしいのは
こんな夜の かなしい理由さえわからずに
思い出すことをやめて どんどん思い出す
夜
迷って
深くなる
フィルムが凍えるように
オムレツの一切れも おまえの言葉の染み
夜にも朝にも灰色のしじま
足を抱え込む
小さいわたし
こんな夕刻が
懐かしくて残酷で
かなしみは
ひとを選ばず
むかしを細くして
こころを遠くして
からからにして 五時のチャイム
忘れ去るだろうか
生きるために
夜 は
形見で
やさしかったあのひと
五時のチャイム
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