途絶

 ぶくぶくと
 水でふやけた胎児が
 一個の人間として生まれ
 さらさらと
 皮のくっきりとした老人が
 一個の人間として死んでいく

 乾いていくのは心ばかりではなく
 肉体も同じこと
 思想も哲学も観念も
 全てを一緒くたにするところの無理解が
 現象としての身体を腐らせていく

 どこから来てどこへ行くのか
 そんなことは記憶に訊いてみれば済む
 最後には何も分からないまま
 虚無が全てを呑み込んでいく
 そんなことはあり得ない
 内側に溜まった汚泥で
 井戸の底から見上げる空が曇るだけのこと

 慰めはいらないが
 慰めることもしない
 親愛の情などはまやかし
 一個の人間として生まれた以上
 どこかのポケットへ落ちていくまで
 互いを弾き弾かれながら
 途絶のときを待っている

途絶

途絶

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-26

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