途絶
ぶくぶくと
水でふやけた胎児が
一個の人間として生まれ
さらさらと
皮のくっきりとした老人が
一個の人間として死んでいく
乾いていくのは心ばかりではなく
肉体も同じこと
思想も哲学も観念も
全てを一緒くたにするところの無理解が
現象としての身体を腐らせていく
どこから来てどこへ行くのか
そんなことは記憶に訊いてみれば済む
最後には何も分からないまま
虚無が全てを呑み込んでいく
そんなことはあり得ない
内側に溜まった汚泥で
井戸の底から見上げる空が曇るだけのこと
慰めはいらないが
慰めることもしない
親愛の情などはまやかし
一個の人間として生まれた以上
どこかのポケットへ落ちていくまで
互いを弾き弾かれながら
途絶のときを待っている
途絶