恋

私の芸術作品は宇宙で唯一の神話を優雅に奏でて、この古めかしい民謡で化学反応させるというのか。
一人の人間が新しく生まれ変わるその時を見た事がおありでしょうか。
少女が破れた恋に初めて涙するしぐさで佇んでいた。乙女心の処女は聖なる初夜に泣くというのでしょうか。
そう少女は泣くという事しか、このまだ浅はかな人生経験ではそんな苦しまぎれの行為しか残されていませんでした。
人生にはたった一つだけしか美しい時間が残されてい無いのです。
人間としてああ、あまりにも激しい感興に、人間にはなぜ心があり少女は情けを与えられ思わず泣くしか、泣いて済むのならいつまでも泣いています。
人生はこの一人の人間として成り立った思いの記憶の数々により、間違った行動をしていくのでしょうか。
心が軽さを失わせじわっと重くなるのが、何という不可思議な重力感の成せる業なのでしょうか。
人間として生かさなくて、初恋は私の記憶の中で世界の放浪をもたらせたというのか。
人生でこの程度の感が狂う事すらも神の手で転がされていく無情に、この胸がしめつけられるものがあった。人間とは心が心を支配している証拠なの。
もう何も怖くない、そしてもう何も望まない。
私の失恋は人生に秘花の真理をお与え、大地から礼讃され全てを水に流す道義を教えた。これも人間を名も無き存在にする為の一つの手段に過ぎなかったのですから。
人間はどれだけの苦しい想いから逃げて、もう全てを放り投げたくて、逃げたい、そして本当にそっと逃げてみるんだわ。
私は初恋なんてしない方が、この世に苦しみなんか感覚しない水の流れの無感情さで、さらさらと流れていく事ができたのに。
神の子の人生になりし救世主の到来に、突然世界は人間が誰も感じた事のない水の流れ方をし始め、私の体はとうに生き返ったのでしょうか。
私の初恋は言葉では説明できない、何か水のように形状を時間と共に柔軟に変えていき、雲のように泳いでいくその先に未来があり、異次元の優雅さでこんなにも全てが振っ切れていく解脱の中で、乙女は全身全霊で両手を大きく広げているのです。
人間の心は何という計り知れない無限の力を持ち、神の手の形状と同じように形状を変化させていくのですから。少女はその大きな美しい瞳でただ未来の流麗な御姿を見つめていたのです。
少女は水が可憐な形状に変化したのをじっと見つめて、初恋の彼方に行かせた方向には無限の心象風景の形があると自覚した。
なる程初恋とはあらかじめ成り行きは決まっていたのです。もう己の心にはわだかまりなんてすでに無かったのだわ。
少女は初恋のほろ甘い何とも言えない人間の愛を知ってしまった時、大人の女になった事への、はしたなき存在として言い逃れをするのです。
人間が誰もいない所で1人にさせて1人で泣いて水になった意味を知ったのです。
もの凄い量の水が溢れて流れだした。水は少女の心の過去にどのような可能性を与えるというのか。
自分とは自分の心にどのような問答を与え、心は心に問い掛けて、少女は少女自身に問い掛けた時、彼方から偉大な神が血肉化する世界が降誕した状態となり、初恋をした少女のその御姿は、ただただありのままの生まれた姿だったのです。
初恋がこの心の全てを洗い流し昇天していく。
この心の感覚を限界の彼方へ飛ばさなければ、意志を持たない空しき乙女の抽象性の彼方へと、詩人の恋は無限の巡りゆく移ろいの中に、少女は人間をもう一度無にして考え改め、これこそ悔い改めた結果に人間は新しく生まれ変わり、ああ一人の少女は人生で恥という感情を初めて知ってしまったのです。
人間という生き物は初恋によって進化するものだと、それ由にこんなに美しかった夢のような人生の初恋の意味はもうこの世のことではなかったのです。
ええ、この世のことではありません。
由に少女のたった一つの初恋なのです。
私はもう何もかもがなすがままに身を委ねて宇宙に力が抜けていくのです。
やっと微笑し初めました。
人間ではなくなっていくように、少女を計り知れない計らいのない人生へと、何もかも広大深遠な宇宙の真理に気づいた少女の心には、もうすでに初恋の想いの中に人生は無くなったのです。
少女がしてしまった人生での初恋は本当にしたたかなでき事だったのでしょうか。
それとも代価として支払った忘れがたき初恋なのでしょうか。
少女にもっと魅力を与える為に、至練の啓示をお与えになったのです。
少女は何か全てを安心して初恋の苦しさももうすでに過ぎ去ってなくなってしまった。少女は一体どんな初恋をしてきたのでしょう。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-26

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