三途の川

三途の川

あなたの人生はこんなものでいいのです。
私に世界的な調和を教えたあなたの美しい秘められた手に、蓮はその化身を媒体化した己の期待に調和する道標、1つの仁愛に気づく青春の乙女の汗に、この人生は溶けなくてはならないのか。
乙女は全てを解脱し、人間の頂上的な愛の花街のあの幻想性を知らしめなくては「私に示しがつかないの。」
恩返しさせて下さい。私の人生はその生きる意味を取り戻し、全てのパーツが意味を持ち始めて世界的な神妙さを纏う幽玄の女性は、白装束で世界から存在をなくそうとしていく、花が散ってはなりません。
秘する花は私にこんなぞんざいな意味しか有しないのなら、山奥にぽつんと1人夕闇に佇む少女は、私に阿弥陀如来とはこのひそやかな感覚なのだと教えるのです。
花は死なない、私にも仏様に見つめられる権利があるのです。もっと愛が煌めく世界は淡白い昇天の中で、最も大事なクエッションへと、仏様が導びいたのだとしたらこの運命はパーフェクトなのです。
そしてあなたは真ん中に澄んでいくのです。そう、あなたは処女の輝きに満ちていくの。もうすでに仏様の真理というものを知ったのかしら。
月夜に男と女の不思議な絡まりを迎える少女の細胞は教えてくれた、あなたのそっと天才が魅せる秘められた真実に、青春は何て可憐に歌うのでしょう。
私、花になります。そっと秘する花にならせた私はこの世界から逃避行をしている。
私に白装束の女がそっと隣に存在感がなく並んで佇んでいる。この不可思議なシュチエーションは誰が用意したの。
私はこの世ではなくなっていき、あの世の三途の川となっていく。
こらっと怒ってもいいのですか。うつつにさせて、このままでうつつにさせて下さい。
男と女の神秘な不思議さに酔いしれて、この細胞のスイッチがONになっていく。男と女は仏の次元までふわっと昇りつめて、そして世界で一番天辺にまで登ったことをはっと知るのです。
人生に一つだけわかってきたこの世界で最も高い天辺を。
人生は三途の川の甘い水の感触に、何て異世界の宇宙的な安らぎを抱いているのでしょう。
三途の川で女と一緒に青空を見上げてぷかぷか浮いている。このまま、どこまでもどこまでも死の安らぎを感じていきましょう。
何も知らなくてもいい。ただ凄く頼もしい女が隣にいた。この世界で一人の人間の存在とは何て美しい傑物なのでしょう。
こんな真理を今までに知らなかった。遠くにぼんやり薄明かりが灯っている。その柔らかく脱していく心は人間の寄り処へと、かつてない安住の存在に、私は変化し新しく生まれ変わっていく。
安心して安心してこのままあなたの腕の中で死なせてください。私はもうそれでいいです、もう何もいらない。
白装束の女が私を精神的なエゴイストにさせた。それはまさに女の嫉妬そのものだわ。私に嫉妬の意味を教えないでください。
だって遣伝子はせっかく三途の川に浸る優しい感覚に、その存在を認めさせたのですから。
教えて下さい。男と女の愛とは一体何なのですか。私と白装束の女の秘められた愛は、ただうっとりと不可思議にそこに浮いていた。
私は死にません。そっと誰も知らない秘められた修道女の御心、その意味のままにそっとしておいたあなたのさりげない恩情。あなたにもそんな秘められた感情が残っていたのです、本当に不思議ね。こんなおとぎ話の中で白装束の女の世界にじわーっとしっとり癒されていく、初めての男と女の信頼の知られざる意味があった。
さあ、この人生を捨てなさい。
もう潮時なのです。これでいいの、やっと死ねます、死ぬって素晴らしいわ。これでもう死んでもいい。
死ねるのか、まだ死ねないのか。でもその時三途の川にただ白装束の不思議な女はまだゆったり浮いているのです。この女の人生にはしっかりと意味があったのですわ。
1人の夭折したあの人間は何を考えていたのか、私だけが知っていたの。
白装束の女はこの世界でまだ何もやれていない、あなたにお願いしてもよろしいかしら。そんな、まだこの世界で生きていきたいの、助けて。
三途の川に白装束の女は一人浮いてゆったり流れていく。
そして、奇蹟が起こった。何とふわーっと浮遊し始めたのです。
ああ、仏様はあなたを殺せないの。
さあ、これから生きましょう。
これであなたは仏様に願掛かったのです。
この時空が満ちていきほんのりと茜色に優しく移ろいゆき沈んでいく、何て人生は素晴らしいのでしょう。
やっとここまで来ました。あなたはこうしてわかり始めたのです。
そんなたったそんな一言で解決したのです。何て遠く彼方に来たのでしょう。
三途の川面から私と白装束の女は並んでふわっと浮いていき夜空を見上げると燦々と輝く星々。
なんて美しい大きな世界なのでしょう。ありがとう。やっとわかったのかもしれない。
そうなのです。仏様は白装束の女をまだそっと微かに生かしているんだわ。人生にそんな大事な意味が、そのままそっとしておいて、もういいの嬉しい。やっと人生を人生のまま、そう生きるのです。私は私自身の人格がその意味を知ったのです。

三途の川

三途の川

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-26

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