マリア

マリア

マリアがそっと私の肩をさすり、あなたどうぞ真っ直ぐににお行きなさいと言われました。
今までの人生本当にたくさんの事があったよね。わかります。あなたの気持ちが、あなたの気持ちはよくわかるのです。
私に好きと言わせないで。私はうまくできるのかしら。私はあなたにその気丈夫さを押しつけるつもりなんてなかったの。
あなたは可愛想なのです。なんて一人孤独に寂しく死んでいくのかしら。そんなの私、絶対許さないから。
なぜ私を一人おいていってしまうのですか。あなたの青白い天国がそんなにも物悲しげにその儚い想いに沈んで、ふと天空を見上げた。
あなた、私をどのようにしてくださいますか。私、そんな愛の世界とは知らないおとぎ話の不思議な世界と想っていましたわ。あなたの不思議な幼児性の幻にそんな微かな灯に揺れて、人生をそんな乙女の心にふっと静寂にあなたを想います。あなたにもわからせたこの青空の先にある白い憧れを。
何てそんなにも儚い人生達よ、あなたはいつ報われるというのでしょうか。少女は悲しげに物想いにふと髪を手でそっと撫でて天の精霊を見上げたのです。
あなたにも、わかっていたのかしらね。私の孤独は誰にもわからないのです。決して誰にもわからない。
私は悲しみの人生にそっと人知れずに泣くのです。私の人生にも1つの真理があるのだとしたら、あなたに優しさを知ったという事なのかもしれません。
あなたにはわかっていたのよね。蓮の花が宇宙に飛翔するその優雅なほんのりとした佇まいの抜けた青さに、私は表現する術を知らなかったのです。
あなたはそう、私の横にいるんだわ。あなたはあの時とても嬉しそうに、青空をその大きく広がる澄んだ気持ちで飛んでいたじゃないの。
そして私に憧れ、ときめきとは何なのかを教えてくれたじゃない。
私、宙に浮いているんだわ、あなたと一緒に上昇する心は果てしなく続く未来への期待とときめきのその微笑に、そっと安らかに、そっとあなたにもたれかかった。
私の大事な人、そのぬくもりに全てをお約束して、ずっと一緒にいるのですよ。
あなた、もっと私にお気持ちを寄せてください。私の気持ちをわかってください。私、もう知ってしまいました。あなたの、私だけが知っている事、それは何でしょうかね。誰にも教えないよ、そんな美しいこと、私は誰にも教えないよ。
私、宙に浮くの。そしてもっと浮くの、ふわっと浮いていくのです。そして未知なる存在になっていくのですね。
これから乙女は鳥になるのです。鳥になってどこへ飛んでいくのかしらね。どこへ飛んでいきたいの教えてね。
私は死なない、あなたが生き返るまでは。あなたはそのようになっていき、そっと私の横にやわらかく佇んでいる。
あなたはそっとそのままでいるのですよ。私が本当にいい事をしてあげるからね。何も大丈夫だからね。あなたはそんなにも大人しくなさって、もっとやわらかくさせてあげるからね。
ほら、飛ぶのよ。
あなた、飛んで、ほらっね。飛ぶわよ。あなたはそして遠く彼方へ飛んだのです。
人生とは1回だけなの。1回性だけなのですね。なんて人生は大事なのでしょうか。私、なぜ存在しているのかしらね。
あなたを抱いてみる。あなたはこの世にこの世に本当にいるんだわ。あなた、ずっとここにいてくださいね。
私はぐっとあなたに掴まっています。あなたのそんなやわらしい姿に寄り添って、何てうわの空でそこにあどけなくいるのです。
私、あなたのものになって大空にいとおしくやさしく泣かされた。どこまで行くのでしょう、どこまでも未知なる世界が広がっていくんだね。どこまででも行こうね。
少年よ、飛ぶのです。大空高く高く飛べ。高く飛んでいるのね。どんな気持ちですか。
いい気持ちですか。あなたの気持ちは、青空。私はもう何も心配することはないのですね。あなたは何も悪くなかったのです。私がいけなかったの。私は何をすればいいのかしら。
そして、何も心配する事がなかったのです。私とあなたにもやっとやっとその意味がわかったのですね。
私、あなた、これでいい、これでいい、そしてこれでいい。

マリア

マリア

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-26

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