幸せへの梯子

幸せへの梯子

私という一人の人間は生まれなくても良かったのではないか。
私は生きていてもこの世界に意味を成していないとそのように思えるのです。
あなたと私との現実からの逃避行。私はあなたの愛に死ぬことができるのでしょう。どのようにして美しく死ねるというのか。
愛を知ったのかもしれません。人を愛する事を知ったのです。
湖を見ていました。海を見ていました。この時間は私にとってとても大事な時間でした。
この地球上で愛すべき美しいものを知った。愛ほど人間に深く関係しているものはありません。

青空を見ていた。そこに天へと続く梯子がありました。この梯子により天上界に登っていこうとしていた。
天空まで続くその梯子は全く未知なる人間のかつて体験したことのない精神世界にうっとりと夢見させた。
そこには一体何があるのか。この人類が感じたことのない広大深遠な宇宙があるのではないか。
梯子の上を見上げると、そこには青空の中に1人の儚い少女がうっすらと登っていた。
するとその少女は私の方を見て手を振って優しく笑いかけた。
少女は私を知っているのだろうか。
その少女に遠い昔の美しい心の故意なる色気と色情に憧れの浮遊感を感じさせた。
ああ、私はあなたを犯したいのです。でも私はあなたに苦しい思いをさせたくはないのです。
そのあなたを体で優しく受け止めて抱きかかえてあげたかった。
少女は柔らかいむっちりとした足を顕わにしていた。
すると少女は私に何かを察知したのか、上へ上へと逃げるように登っていった。そこから下を見下ろすとだいぶ高い所まで登ってきたようです。
下界の彼方に青いの琥珀を散りばめた美しい地球が広がっていました。

少女が梯子を登っていくこの孤高で儚い姿の幻に、人間としての優しさをうっすらと感じさせていた。
私は少女に心を見抜かれていたのです。
私には下心があったのでしょうか。いいえ、私には下心なんてあってはならないのです。
言動が軽く浮わついた色めきたつ男にはなりたくなかった。ただ真面目で誠実な人間でいたかったのです。
そして少女は素性が浮わついた男に対して嫌悪感を示すのです。
私は普通の真っ当な人間として人々から愛されていたい。

でもそれは少女から嫌われて初めてわかったことなのです。このような失恋の悲しい気持ちはもう二度と経験したくないと感じた。
だから私は改善して思いを立て直し邪な心を全く捨て去って心を解きほぐす。この正しく生きる力を強く信じています。
私はあなたに歌を捧げました。私から少女への愛の歌です。すると少女は一緒に声を合わせて優美に歌ってくれた。何て嬉しい男と女がひとつになった邂逅なのでしょう。
私の心は潤いを取り戻して新しい水の流れを脈々と再生させ、エーテルの水蒸気へと還元させた美しい説法を受けた。
少女は私を見つめてぽっと心を許し始めました。少女はこんな私を許して男として認めてくれたのです。
ああ、でも私はまだ女を知らないのです。私には女心というものを知らないのです。
そんな初心な私でいいのでしょうか。それでもいいのよとあなたは私に寄りすがろうとした。
私に恋愛の再誕を託したのはまさにあなただった。
それは地球上でただ、夜の木々に泊まる知性に溢れるふくろうだけが知っているのかしら。
私はこの不思議な少女の心の中を知りたくなりました。でも移り変わりやすい女心を理解する才能が私にはないのです。
神の使いの巫女として清純に生きる事を待ち詫びる女。
家庭で食事を作り待つ女がいてくれて、私は何て幸福な人間なのか。
ああ、私はこの幸せの中で死んだ方がいいのではないか。いっその事死んだ方がこの女のためになるのではないか。

私は女に執心してはならないのです。あなたは私に余計な企てはしてはなりません
男と女にはお互いに様々な感情を持ち合わせて、各々に向かう道筋がありました。
ああ、私はそれでも梯子を上へと天空に向けて薄らいで登っていく。
この世に別れをつげたいのか。
私がそのような悲しみの気持ちでいた時に、少女が上から降りてきて私の方に近寄り体を優しく抱いてくれた。
私は本当に嬉しかったのです。私は何か心がほっとして、世間の常識を一回捨て去り、一度あなたの啓示を信じてみることにしました。
人生で恋愛に悩むことも人間の成長にとっては大事なことだと知りました。別に大上段に構えるわけではなく、まだ私は死ぬのが惜しいと感じ始めました。

一人の私の未来は寂しかった。私はずっと孤独を抱えて生きてきたのです。
でもこれから私は少女と一緒に梯子を登っていける嬉しさ。何という未来の希望に溢れた確信なのでしょうか。
私はこれから少女と新しい世界に行こうとしています。
少女は私をどうしたいのでしょうか。そうだ、いい事を教えましょう。
私は梯子の青空の上に何があるのかを知っています。これから梯子の上空の新次元で私達は結婚をするのです。
さあ、そこで私達は幸せの天使になるのです。幸せな天使にならなくてはならないのです

幸せへの梯子

幸せへの梯子

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-26

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