オルガン
ついにここまで来れたのですから、このような私になりえたのです。
私を優しく抱くあなたはあのオルガンの設形者なのです。それはあの教会のオルガンの淡く儚ない夢のまた夢なのでしょうか。
私を不器用に扱わないでください。このオルガンはうまく考えて作られているのですから、あなたは安心してくださいませんか。
この時空は感謝に満ちた宇宙、山、平野、湖、川、海に存在意義を発見し、自然の中に我が身を全て委ねるのです。
あなたの静謐な音階にひたすら感動し、人生の教科書を書かなくてはならないのか。私の人生はこんなものではありませんでした。あなたの人生もまたこんなものではないはずです。
天上界に人類孤高の頭頂葉にオアシスを本当に見つけたのでしょうか。少女はぼんやりと青空の遠く彼方を見つめている。
天空の湖の畔で人魚が泳ぎ戯れて、流麗な清き水が流れる様子をふと見つめた時に、世界はこんなにも大きくて広い事を知るのです。
私を人生劇場の注目の的にさらせないでください。
少女は天国の儚い夢の情景を想像して、そこに我が身を置いてみるの。
そして教会のステンドグラスの中の青い静謐な時空でオルガンを弾く神父の後姿をじっと見つめたこの未来に、世界がふわっと明けてくるのです。
教会のオルガンは私の好きな音楽を、天上界の青いオーロラに寄せては返して鳴り響き渡る。
天地よ、誰が創造したのですかと大上段に構えて、神はオルガンの音に史上の愛をこめて無限に届けていく。
教会の設形者よ、メタモルフォーゼの意味を教えてください。
教会のオルガンは天の頭頂葉に神々しく昇っていく人生で一番完全に調和した情景に、青いオーロラが大きくはためき、一筋にひらひら飛翔させていく無尽蔵の御大があった。
教会のオルガンはうっすら青く輝やき、天国の麗しき様子を細緻に極上化していく。その先にあなたが飛んでいなくてはいけないのです。でもその先にあなたは飛んではいけないのです。
この人間の世界が初まり、終わる境界線で神は手招きをしている。
教会のオルガンの生命体が織り成す諸行無常の人間の世界に、命懸けで自分だけの世界観のオリジナリティーを表現していく無限の魂があった。
あなた、私を本気で天国の階段を登らせたというのでしょうか。人生を儚なくさせないで、こんなにも私はまだ真っ直ぐに伸びているのですから。
私の持つ内なる宇宙はこのオルガンによって神経の中枢を本気にさせられて、人間の持つ究極のエネルギーとはこんなにも桁違いで凄いのです。
こんなままであなたはいいのですか。もっとあなたのなりたかった人間について教えてください。
オルガンの天使のほんのり優しい囁きで私がこんなにも元気になっているのが嬉しいの。
私はそんな事でとっても可憐な乙女へとうっすら大人の皮が剥けていくのです。自然な感じでいいの、普通のままでいさせてください。
そして、私をはじめていかせてください。
こんなにもオルガンは人生の未来の情景をはっきりと指し示してくれているではないか。
そんな事をしてオルガンはいい気持ちなのですね。私、ほっておけないからあなたの事が好きです。
そして私は夢を叶えている。ああ、今私があの神々しい不思議の国のオルガンを弾いているのだわ。
こんなにも世界と私とオルガンが手を繋ぎ合い心を確かめ合う。さあ、広く一筋にどこまでも遠くに伸びていきましょう。この世はもう青春の春なのでしょう。
私のオルガンは何でも優しく教えてくれるのです。
あなた、飛んで行きたいの。この世界をもっと飛ばせてくださいな。
もっともっと昇っていく教会のオルガンと同じ偉大な夢を叶えたい、そのように希望を持っていきたいの。こんなにも私はもっと輝きたいの。あなた、私をいかせてください。
オルガンは世界を調和させた神の光でうっすらと輝き、少女は過去に戻らされし懐かしい時間にたゆたう、若かれしあの青春の時代に戻らされ、全くの若く素直に、まっすぐ一筋に遠く彼方に行った。
オルガンは私を青春に戻らさせてはっと青空を見つめる。
春よ、私を魅力的な大人の女にさせて連れていって、この青春のオルガンそのものになりたいと思い焦がれる。
世界、世界、世界、教会のオルガンを弾く神父は、私にとっての神の啓示を荘厳に鳴り響かせる、少女時代の無邪気な心の青春像だったあの懐かしき君がいた。
私とあなたは天に昇るオルガンになった。
教会の神父は、何ていじらしいのですか。こんなにも恥らしい秘密の世界を教えたのは、あのオルガン奏者による神の荘厳な音楽だったのです。
神々しい人間の青い一筋の手が宇宙を掴むのを観察したのです。
天空を揺らめき優雅に泳ぐ権利を与えられ、私は天国に昇る御国の使者になる。こんなにも空は青空でした。
これで良かったと想える、こんなことで、やっと少女は純粋無垢な女となるのです。
私は私。オルガン奏者よ、その正体は全くの人生を知り尽くしたマイスターであったのです。
私は処女なのです。私をやってもいいのです。万物を解き放つ。やっとこれでこれで。
オルガン