パン

パン

この世界に誕生させてくれた事を一体誰に感謝すればいいのでしょうか。
宇宙からのメッセージを聞く事ができる少女は、天空の彼方遠くを青く不思議な眼で見つめていました。
それ程までに不思議な眼は一体誰のものなのでしょうか。そんな気持ちにさせるあなたって本当にあの世で誕生した雰囲気をまとう聖者。この世界の全く経験した事の無い純情なあどけなさと静謐に可憐な青さを持っていました。
そのめでたく生まれたばかりの生命の感謝を私に啓示された時、これで私もあの少女のような、遥かなる宇宙を高く飛翔した一匹の神の鳥と同じ高度で飛べるのだわ。
海と空と草原をずっと見続ける少女の瞳は、純真な童話の白い世界に存在していた姫君の眺めを得たのですね。
このように神としか会話できない少女の不可思議な思想は、広大無辺な宇宙にしか頼れる者が無かったのかもしれません。
真実の私としてしか、私を愛せない時空に、少女はひたすら孤独に耐えて季節は春夏秋冬を巡らせ、めくるめくる人生とは決して大した事では無いのだわとふふっと笑ってみせる。
こんなにも美しさを維持している少女の脳は、一体何にときめき続けるのでしょうか。
私だけのひそやかな想像で、あどけない少女から女神へと転生させてみた時、宇宙には一斉にきらめく流星が感覚を新しくさせて発光し、法王が想像する超越した次元の宇宙へと迎えられ、少女の手の平にそっと人間の細胞を載せてみたのです。
こんな事で手の平に一つの細胞が誕生するのです。生ませた遺伝子の気持ちって不思議です。
さあ、天空に淡白い食卓を囲んで美味しいケーキを頂きましょう。人生の暖かい春を体全体で感じる今、世界誕生の清らかな心となる。そしてあなたにも無の感覚を教えてあげたい。
私は今海になり、青空になり、そして宇宙になるのです。
そんな儚く淡い気持ちに初めて少女の恥らしい体はなり染めし大人への階段を昇るのです。
大人とは少女にとって儚く手の届かない世界であった事が、今となってはただの幻となり散っていく。
そして、きらめくオーロラの中を駆け巡り好きな空想へと逃げていくのです。もう少女はこれから人間として想像の世界で生きていけるのです。
ほらっ、広大な草原に蓮の花が一面に広がって、全くの少女の心は、もう過去の儚く淡い女となってしまいました。
私は未来に生きていけるのでしょう。
また、過去にも生きていけるのでしょう。
人間の細胞の誕生がこんなにも凄く有難い事なのですね。
この天国の台所で私が生まれて来たなかで、一番美味しい料理を作りましょう。あなたに嬉しいと想って喜んで頂けるのが、こんなにもふわふわと初めて青空に儚く浮遊させるのです。
天国の食卓のとびっきりの料理に、精霊はそっと静寂に広がりあんなにも遠く彼方から人生のコラールを奏でるのです。

そして私は世の中をパンのみだけに生きていくのです。
少女の生まれたばかりの美しき手に神の創造したパンが置かれた時、少女の微かな心の変化にこの世界では無くなったのです。
少女はその神々しいパンをじっと不思議そうに見つめた時、パンは無重力に揺らめき微かに動き始めました。
微かに揺れ動いたパンが少女の方へふわふわと浮遊していく、少女は初体験して生まれた今を感謝する。
その無重力のパンを食べた時、少女の脳に神の存在が宿るパズルが精緻に組み合わされ、バッハの威厳溢れるオルガンが甘く囁き、敬虔な心にすっかり研ぎ澄まされていった。
そして、パンが神の形状へと優雅に可憐な変形を遂げていく。こんなにも美しいパンの形状で、この世界に生まれてくるのを、私は想像していたのです。今が一番の理想形なのです。
神の理想形となるために、陸と海と空の天地の創造を真似て最もシンプルな形状にしたのです。
私はシンプルでしか成り立てない60兆個の細胞なのです。
この至上なる愛のパンによって、私の細胞は満たされてどのような恵まれた反応を行うのでしょう。
私は本能としての食欲というものが存在し、人間としての素粒子を素粒子として自立させて自信を持たせたのです。
少女の心はどんなパンを想像しているのでしょうか。少女の感覚でパンの美しい形状を手の平に想像して、それを神の遺伝子の形状と比較した。
何て似ているのでしょうと、嬉しくなって何もない青空に神の表情を浮かべて見つめるのです。
その時、光り輝く神の素粒子がふわっと少女の手の平に載りました。
神の啓示の囁きが聞こえて、天国の食卓に降誕したパンの様子を想像した。
そして、ついに少女の手の平には思い描いたパンを載せれたのです。ああ、神にそっとひそやかに語りかけた。
少女の手の平に載った神の素粒子を、5感の究極の状態で極限に凝縮して、それを神の方程式の軌道にふわりと乗せていく。
神の方程式の軌道上にパンの素粒子が載り遥かな宇宙を優雅に回転して愛されていく。
そしてパンが神の啓示を述べ始めて少女の未来への御加護が与えられた、エルサレムよ、私は帰ってきたのです。
神のパンの素粒子を少女は無限大に宿る生命のエネルギーとして使い、これからもう一度宇宙を創造してみよう。
さあ、今宇宙が創造されていく。
遥かなる宇宙が優雅に創造されていく情景を神は食卓から観察している。
そっとか細くしなやかな美しい手を少女の頭にのせて神は誉め称えました。
少女よ、よく頑張りました。あなたは人類にこんなにも美味しい愛のパンを届けている。そして宇宙に1つの究極の神の方程式を宿したパンが存在する。神の素粒子はこんなにも生きるのが嬉しいのです。

パン

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-26

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