雲

少女となぜ手をつないで歩いているのでしょうか。そして神と私はどのようなお付き合いで言葉を使用しているのでしょうか。
広大深遠な宇宙にいて、この世界を完全に忘却の彼方へと追いやり、私と神は宇宙に迷いこんだというのでしょうか。
少女のその1つの個性に秘められた情感は、雲を掴もうとして大きく手を広げて伸ばして、未来への万物の物体移動を予測するために、自分と雲までの距離を計測していたのです。
どれくらい飛べば少女は、この生涯で待ち侘びた雲を掴めるというのでしょうか。
雲はたゆたうようにしてゆったりと流れて、この世界に初体験を1秒1秒と感じ取っているが、まだ少女の存在には気がついていないのです。
少女は世界に雲を自らの手で作り出して、手の平で無限の形状で万物創造の変化をさせて、空中に生まれたての赤ん坊のように浮かべて眺めるのが最も好きな遊びなのです。
私の手で無限に変化して魅せられていく、この白いやわらかな自由な雲よ。
雲はなぜ自由な意志を持ち、この意志の不思議な宇宙の様相に、私はただ一人孤独に包まれて深い原初の精神状態へと、羊水の赤ん坊のように丸くうずくまっていく。
私はあなたを死なせてしまったのでしょうか。
雲はただ素直に一人少女の御姿の陽光を見つめている。ただ青い処女の心想いで、人生の私は世界の無常をじっとじっと見つめているのです。
青空をたゆたう雲は少女の存在に気付いているのでしょうか。
雲は少女の心の想いを全て取り払うように、この世の存在として全く清められた青い夜に、ただうっすらと浮かび上がる聖堂は、静寂にただ究めて1つ青い量子が弱々しく昔の記憶を呼び覚まし、宇宙はゆるやかに雲を動かしていくのですね。
雲はただ一人の少女しか、この清らかな少女しか知らなかったのです。
少女は雲に全身全霊の夢を象徴させて、生まれて初めて知る母の感覚に、この世界はただ意識もせずに創造されていくのです。
私は少女という、世の中にはこんなにもいい人がいる事に心より感動しているのです。
雲よ、私に心の清澄さをもう一度復活させて、少女の心には少女だけの少女がそこにいる。この何も知らない心になった時、私の万能細胞は復活していき空中に浮いたのです。
少女は純粋な雲の漂流者になって、青空を苦しみも無く、ただ癒されていく意志伝達の美しき世界に、若い青春の遺伝子とは何なのかをはっと知るのです。
もう何もかも忘れましたと、雲に甘えて優しく本当に生まれたての心で触れてみた時、雲と完全に一体化する私は人生が見事にほどけていくのです。
こんなにも雲が人間的な無我の万事静寂さで、己の精神の宇宙は安らかな一つの物語を語り初めるなんて思いもよりませんでした。
少女は満面の微笑で雲に抱きしめられ、この全宇宙に一つの安心を、青春の解逅を見つけたのかもしれません。
私を一人の人間にしてください。
宇宙の創始者のようなエレガントさでこの一つの雲を作らせてください。
少女はただただこの無重力な雲となって浮かぶ情景に嬉しくてただ泣くのです。
私を助けて下さい。そう少女は私を助けてくれました。
人間らしくなった少女はほんのり一途に雲となって青空の高みへ登っていき、少し離れて下界をそっと見渡してみた時、そこに昔の少女を見つけた。
その地上の少女は今の雲になった私をずっと憧れの願望で見つめている。その過去と未来の私は、こんなに違うけどどっちも好きです。
下界の少女が私に大きく手を振って両手を十字に広げた時、神が雲の遙か上空から愛の光を指して、無に解逅していき人間の心が雲の形状になっていく。
そうだったのです。
私は雲になりたかったのです。そして、こうして雲になっている。
神が創造した雲に囲まれて浮遊している。私のような人間は、この世界を完全に忘我して雲になるべきだったのかしら。
この世界は、雲だったのでしょうか。それとも私の頭の中の想像だったのでしょうか。その答えは雲自身しかわからなかったのです。
青空に広がる雲達よ、これから私は雲のまま人生を生きていこうと想います。大いなる青空の雲からの眺めは広がり澄みわたっている。世界に初めて雲を誕生させた少女の想像力で、そのように世界は創造されていったのですね。
こんなにも愛された雲達に囲まれて、この至上の世界に少女は少女として生まれて来て良かったと感じたのです。
完全に超越した感覚で超えた世界に雲として完全に生まれている。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-26

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