空想ドリンク
「ドリンクいかがですかー」
今日もまた都会の駅前で試供品を受け取ってしまった、ペットボトル飲料だ。それは私のくせだ、それにはあるわけがある。私は常にアイデアを必要としている、それでいてひどく疲れるときがある。私は雑念と呼ぶべき自分の苦しい考えを全てメモや言葉や歌に変えて解き放つ、だけどそれは常に場所を必要とする、あるとき私はきがついたのだ。人からうけとったものからは特別な発想を得られる事がある。かといって何でもいいわけでもなかった。駅前の雑踏、きれいな夜景、だけどどこか、裏の世界を包み込んでいるような、奇妙な怪しさをもっている。私は中央のひらけた場所の円形の台座のモニュメントの近くにたち、試供品を飲むことにした、それを私に手渡したお兄さんは、さぐるように私と目を合わせたが、その反動でゆっくりと私は空をみた、都会のそらは星が見えにくい。
ゴクリ。一口のんで思い出すのは、家族の事だ。兄は優しい、妹でよかったと思う、少し明るすぎる事が苦手だが、悪い人ではないし何でも相談にのってもらえる、そしてどこかへ旅行するたびお土産をかってくる、先月も国内のある場所へ旅行へいった。自然豊かな場所だ、名物のおみやげ、それをひとくち。ぱくり、食べてみるが、味も、においもいいし、うれしい気持ちになる、だけど発想の転換や新しいアイデアがわいてこない。いつもの事なのだ、だからそれじゃだめだった。
ゴクリ。もう一口飲んで思い出す、友達とカラオケにいった月曜日、部活でつかれたからだと汗をかいた肌をふいて、彼女は私の分のジュースをもってきてくれた、発想はうまれない、友達でよかったとおもった、その楽しさは、その瞬間しか続かない、だから少し悲しくなった。
私は一人の時を必要とする、それは街の孤独が提供してくれる、試供品を配る人は、孤独な目をしていた。孤独な目はちょうどいい、私はいつか、私の中の雑念を、満足するまで精査して、きれいな写真を撮りたいのだ。私は私の中の雑念を放棄しきる事ができない、それは魔が差すともいうし、それは私の中の本当の私かもしれない、あるいは悪意なのかもしれない、だけど形にならない発想が嫌いなわけじゃない、私は写真が好きだから、その発想を写真にかえて、いつか表現できたらいいと思う。
空想ドリンク