天国
この世界の真理を教えて下さい。
生きているのだろうか。死んでいるのだろうか。死んでも意味があるのだろうか。いつしか何もしなくなった。死も同然なのではないだろうか。
でも私の中には宇宙がある。
天国の階段を登っているこの儚げな感情が、朧気に生命感を無くしていく。
私は辺りを青い空にうっすらと囲まれて、生命は仏様の善の心情に吐露していく。
そこには美麗な仏様の女性のすらっと背の伸びた長身の薄い肉体を、この世界にまどなんとかとどめていた。
この世界にとどめるだけのエネルギーがもう無くなろうとしていた。その微かに薄らいだ心情が私をこの世から無くそうとしているかのように思えた。
その女性の体に触ると触れなかった。この女はもうすでにこの世から死んでいるのか。
しかし、生きてもいるようだ。真っ直ぐに前を見ていた。不思議な女なのです。この女に話し掛けるが何の返答もないのです。女は何を感じ何を考えているのか。
この女のする事がわからない。私の心が変化するように自然は変化していった。
そしてこの女も同じように変化していく。
あなたは一体何者なのでしょう。
1人天国の階段を登っていくその生死の薄い世界の中を、その女は私の後をついてくる。何か未だ感じた事のない女にもの凄いキリスト的な静謐な憧れと人間的な好意を感じさせるのは、私の人生経験をもってしてもわからない。
この女は神ではないか。
そして天国への門の所まで来ました。
そしてその女と一緒に天国の門をくぐりました。この天国にいても、その女は生命感が全く無かった。不思議な実体感の無い限りなく流麗な世界。天国の淡白い至福の情景が私をやわらかい昔話の世界にそっと連れていった。
私は実は存在してはいないのではないでしょうか。私に存在の問題を考えさせたのは、この天国の至福な生命を感じる事ができたから。
そしてその女は存在しているのか。存在していないのかわからなかった。この世もあの世も実は存在していないのではないか。存在する意味も実は無いのではないか。このなおざりな生と死のあいまいな状態の中で、どんどん存在を無くしていく。
私の全てのものが遠くに遠くに流れていく。遠く彼方にいってしまい小さくなっていく。こうして存在の状態を無くしていき肉体も精神もあるか無いかの、一つぶの砂になった。
そう私はもう存在していないのです。
この世あの世から完全にいなくなろうとした時、女が私の手を優しくやわらしく包みこんだ。私は全てが全ての人生と共にに完全に癒されて、もうただただ美しくなっていく。
このような私でも神は肯定して下さったのです。そして完全に安心した感情のままでいける。ありがたい。これで良かったのです。
人生が人生で無くなるその時、私、神に会ったのです。生きとし生けるものに神は教えて下さる。私は私として死ぬ。私は神に見守られて死んでいく。何てありがたいの。もう何も思い残す事なんてありませんでした。ただただ優しくうっとりとして神の手の中で死んでいくのです。
天国