人魚

人魚

あなた、天空へと羽根を大きく広げたお気持ちはいかがですか。
ある朝起きた時に、私はこの世とは違う所へ来たのではないかしら。恋愛を知らない人間になってしまいました。神様、それでいいのでしょうか。
海辺を泳いでいる人魚達はこの世の明るい星空にほの白い月夜の中で、2人で談笑して泳ぎまわるその美しさをどのように表現すればいいの。
この世の聖なる月夜は、私一人だけのものなのです。
私を人魚はなぜか見ているのです。人魚は私に一体何を感じて想っているの、そのあどけない表情で。
あなたと呼べる存在がこの世にはいない私を、不憫に思っておられるのでしょうか。
そんな事ないのです。ふわっと舞う麦畑の中での
少女のようなもの。
そう、普通の人間として、普通の人生を迎えられなかった。ただそれだけなのです。
人間の自尊心だけでこの世界を生きていけるのでしょうか。何か満ちていないのです、なぜなのですか。
お許し下さい。私には自信がなかったのです。

しかし、その時人魚は優しく許容する大きな心で、私をじっと見つめているその表情は本当に暖かかった。
凛と気高いその表情で、私は一心に癒されていくこの史上なる不思議。
私は私でいいのかしら。そうなのです。このままでいいのです。
人魚は私をあどけなく見つめて、海面を優雅で爽やかに泳ぎまわる、その無心なるときめきに心は安らいでいく。
あなたを私はずっと探し求めていたのかもしれない。月夜はさらに深さを深めて青くしんしんと沈静していった。
人魚は私を見てそっと手招きをする。この人魚の優しい心遣いに、不思議、和らいでいく。
何という心の美しく澄んだときめきなのでしょう。人魚という寄り処へと心は生命を発揮し、私は人魚と一緒になる運命であったのではないかと、心は得も言われぬ模様を感じていく。
母なる海への期待を胸に、未知なる生命の進化を求めて人魚のもとへと突き進んだ。
人魚が私が泳いでいるのを見て、この世に忘れていた一番大事なときめきを発見したようにはじける。彼方遠くの大気圏の世界、宇宙、星々は動き始めて大いなる次元へ、次の超越した時空へとジャンプした。
ジャンプしていく銀河と星雲の総体を飛翔するラインは、究極の神様の作り上げた方程式。
私を人魚にするつもりなの。
人魚の世界は夢に溢れる。大陸の俗世を遠く離れて、神々の水世界は究極の肉体と精神の清純や安心があった。
大陸での俗性を完全に捨て去り、肉体が極限に清められていくこの微生物的な感情。
なんという居心地の良い完全なる平安に満ちた、いとおしい太古の母の羊水に甘く優しくなっていく。
日常から完全に解き放たれ過去の日々は遠い遠い昔。
人魚との生活は究極の夢の世界。私の心は完全に無になっていく。
私は人魚を愛しています。人魚との新生活をこれ程までに愛している。
人魚と愛し愛され、私は不可思議な未知なる人間になっていくのです。
天空には十字星が輝き進化の多様性を示して、遠い時空をその肉体を持って証明していく。
私の海に完全に心身の調和のとれた全てが安定した、宇宙の遠い限りない夢の万感たる情緒は、海上の蓮へと転生する進化の多種多様性。
あなたは海上に浮かぶ天空の蓮の花をご存じですか。それは、それは神様の真理のオデュッセイでした。

人魚

人魚

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-26

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