あなたは宇宙が始まった時の景色だった

あなたは宇宙が始まった時の景色だった

宇宙が始まった時の景色は、どのようなものであったかをあなたは知っている。私に教えるこの神掛かっていく宇宙。女性はこちらを不思議な物思いに耽る表情で何を想って見つめているのでしょうか。
あなたは私を見てくれている。それだけで何だか至福の時間なのです。あなた、私を見てくれる。なぜなのですか。
白い雪の銀世界を一人歩く少女は、一体これから何処にいくのでしょうか。白い孤高の大地に真っ赤な血を吐いて、一人死んでいくのでしょうか。
その時青い天から白い雪が舞い降りてこのしんしんとした静寂は、優しい不思議な光惚に包まれていく。
その少女が一人孤独に死んでいくのは人間の悲しい宿命なのだろうか。
いいえ、少女はまだ死ねない。これからやるべき事があるのです。
少女は雪の中を一人歩いていました。すると一人の幼児が真っ白な雪の中で、天空を孤高に見つめながら泣いています。幼児は清められた表情で少女を思いが溢れる眼でさっと注いだ。
少女は幼児を抱きかかえてなだめている。幼児は冬の白い大地の中でたった二人、少女と隣り合い広々として澄んだやすらぎに。
少女の機転に富んだユーモアで、幼児に優しく語り掛け天使の微笑にそっと心をはだけていくの。だって少女にとって幼児は世界で一番いとおしく愛すべき人間なのです。
幼児を優しくいたわるように抱いている。もしかして、少女は真っ白な雪の天使ではないのか。
少女と幼児の周りに優しく降り注ぐ細雪の叙情的な景色は、無限の色模様を奏でた。あたりは明るくほのかな光に溢れて、気持ちがうっとりと馴染んでいくこの感情の些細な変化を、人は癒しと形容するのかしら。
真っ白な雪がしんしんと舞い降り、愛をもっとふんわりと軽くして、救世主の降誕を指し示している。人間の世界を離れた人気の無い2人だけの、天使が用意した特別に静謐な美しい教会。
こんなにも救われていった真っ白な雪の大地に、青い教会をぽつんと佇ませていた。少女は幼児を優しく抱いて、青いひっそりとした聖なるオーラが漂う、人気を全く感じさせない青い教会へと進んで行きます。
教会はほの暗く青い静けさで不思議な沈黙は、神がそこにいるかのような未知なる時空がミステリアスに存在している。
少女と幼児だけの神聖なミサに、この世界は美しく清められた。ただステンドグラスに映る神の子の御姿が、2人を優しく見つめて全てが報われて穏やかになっていく。
少女が幼児に優しげにそっと微笑む。幼児はただただ美しく澄んでいた。
その時マリアの像が日の光に当たりぱっと明るく輝やいている、そのほの白い薄明かりは微か遠くに癒していく。
そう、少女と幼児は確かに全てが癒されたのです。少女と幼児は本来あるべき場所である、帰るべき住み処に帰ったのです。
幼児は1人よちよちと神壇へと世界の淡く儚い青空に浮遊していく。
天国からその幼児へと世にはない暖かいオーラを神妙に浮かばせた。
そして神壇では幼児が、1人の未知で崇高な威厳のある神の子とお話しをしていた。
ああ、世界の時は満ちたのです。
それを優しく見守る1人の美しい女性が時空を超えて青く凛として立っていた。
青空に偉大な神の視座で至上に美しく澄みきったこの世界を飛翔させる。
神壇上の神の子と幼児は少女に対して優しく微笑むその可憐な御姿に、そのあまりにもの美しさにこみあげて、少女は激しく感動してただただ泣くのです。
幼児は神の子に優しく大きく抱かれて、ただその人間にほっと安心している。
1人の可憐な女性のマリアが幼児を大事そうに優しくそっと撫でている。
聖なる時空が感動的に流れて、ああ、真っ白に輝く天から神の子がまばゆく降誕している。
神の子が抱きかかえた幼児をそっと少女に手渡すその時、神の子の持つ世界の得たいの知れないミステリアスな感情を知り、心が、心が生まれて初めて今感動しているのです。
少女は、はっと知ったのです。神を。これがあなたは宇宙がはじまった時の景色。

あなたは宇宙が始まった時の景色だった

あなたは宇宙が始まった時の景色だった

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-26

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